BASARAの石田を幸せにし隊。

戦国BASARA3の石田三成をひたすらに応援するこっそり避難ブログ

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散華夜 下巻

ゲーム本編発売一週間前記念・家三SS後編です。
yuminoya自分勝手妄想設定『花三部作』
これにて完結。




大坂城の隅にひっそりと作られた、竹中半兵衛の庵の小さな庭の真ん中。
白く浮かび上がる細いうなじと横顔。
「――三成ッ!!」
ばしゃばしゃと、濡れた庭を踏みしだいて家康はずぶ濡れの三成に駆け寄った。
「こんなに濡れて…冷え切っているぞ!?」
強く肩を掴まれて揺さぶられて、三成の両手に頼りなく収まっていた白百合がはらはらと散る。
「家康…?」
彼に駆け寄った家康は、激しい雨の中、いつもなら美しく光を跳ね返している苔色の瞳が黒く見えるほど、三成の身体中から血の気が失せていることに気付き。
「――ッ」
言葉にならない苛立ちと共に、家康は自分の羽織を脱ぐと、気休めまでにずぶ濡れの紫苑の銀髪に被せた。
「三成…気持ちは分かる、だが」
「…半兵衛様が」
「三成…」
堪え切れずに、息を吐き。三成は肩を震わせた。
そのまま、家康の肩に頭を預ける。

「半兵衛様が…もう…居ない…」

「ああ」
同じ様に濡れながら、家康はきつくきつく、三成の頭を、細い身体を抱き締めた。
「気の毒なことだった」
「…どうして…」
「………」
「もう少し…静かな…」
「――それは無理だった。三成」
「何故!?」
「…あの方もまた、もののふであった故」
「…ッッ」
解っていた。
低く艶やかな、擦れた悲哀に満ちた声で。
三成は言葉ではそう云ったが、心では分かっていない、引き裂かれるような顔をした。普段、誰もが息を呑む程に整い過ぎた男らしい涼やかな顔立ちは最早なく、そこには育ての親を失くした、神に死んだ者を返せ、と激昂するような、幼子――
そして。その表情を見たとき、家康は気付いた。
泣いていない。
頬を濡らしているのは只の雨だけだ、と。
暗い瞳はカラカラに乾いて、まるでびいどろの眼球を取り上げられた人形のようだ、と。
「――三成?」
家康の問いに、微かに三成が顎を上げて応えた。
「お前、泣いていない、のか?」
「…泣けぬ」
そうして。
三成は引き剥がすように、細い腕で家康の抱擁を解いた。
「私は。豊臣の子なのだ。強くなければ」
ならない。
最後は雨音に掻き消されるくらいの囁きで。
その様に、家康は胸に耐え切れない――切ないなにか、が沸きあがるのを感じ、最早これまでだ、と腹を括った。
そして、自分を押し退けた細い腕を手繰り寄せ、もう一度、抱き締めた。
強く。
けれど、今まで――幼い頃、人質として、子飼いとして出会った馴染み――としての情ではなく。目の前の美しい、月影のような其の身を。心を。最早。
「泣いとけ、三成」
尖った、白い耳元に囁く。
は、と。三成の息が止まった。
「――家康?」
何故だ、と彼の人の抱擁を今一度解こうと、三成はもがいた。
だが、冷え切った身に最早そんな力は無く。仕方なしにぎこちなく、そのまま広い肩に頭を預けながら、もう一度訊いた。
「家康?」
「だから、泣いてくれ」
「ならぬのだ。私は、豊臣の子。半兵衛様の御遺志を継ぎ――」
「阿呆か、お前」
怒りさえ滲ませたその言葉に、三成が首を捩って必死に山吹の瞳を探した。
そして、捕らえた時。
その瞳から流れている涙に、もう一度「は」と息を止めた。
「何故お前が泣くのだ、家康」
「お前が苦しんでいるから」
ぎう、と頭を引き寄せられて、背中をさすられる。
雨の中でも感じられるその温もりに、三成は戸惑った。
手を握ってくれた。初めて逢った時「さあ、いこう」と手を取ってくれた。
そのぬくもりは憶えている。
だが、今感じる温もりはもう幼い頃のあどけない戯れなどではなくて。
「……私、は」
「お前が自分の感情を抑え込んで仕舞えるくらいに器用なもんか」
押し殺すように。だが、まくしたてられた言葉に、三成の顔がくしゃっと潰れた。
「儂にそのくらい、解らんと思っているのか」
「だが、秀吉様は私に」
「もういいから」
今度は頭を撫でられる。刈り込まれた後ろ髪の下、うなじを広い手に包み込まれて、思わず「あ」と息を漏らした瞬間――
ほろり、と三成の瞳から涙が零れた。
雨ではなく。
生ぬるい、塩辛い、己の悲哀から生まれ出ずった、雫が。
暗い瞳に明るいみどりの色が帰る。
「…ふっ…」
細い肩が、大きく波打った。
そして、三成は拳を握り締めて、とん、と家康の胸を叩いた。
「…き、さま、は」
「うん」
もう一度、頭を撫でられる。
「…ッ」
声を殺して、三成は泣いた。
己を抱き寄せている男の肩に額を預け、ただただ、泣いた。
どうして。どうして逝ってしまわれたのですか。
わかっている、でも。でも。
どうしようもない想いを、心を引き裂いて零れていく哀しみを、そのまま涙にして晒した。己を抱き締めている男に。
そうして、どのくらい冷たい雨に二人で打たれていたのだろう。
やがてその嗚咽が波のように引いていくのを自分でも感じ、「ああ、出て行った」と不思議と穏やかな気持ちで、三成はすん、と鼻で息を吐いた。
「……大丈夫か?」
先程とは打って変わった柔らかい声音が、耳元に降る。
近い。
でも。
「……もういい」
だから、放してほしい。
家康の厚い胸板をぐっと腕で押して、もう一度抱擁を解こうとしたが、何故か抱き寄せられたままなことに、三成は小首を傾げた。
「もういいのだ。放せ」
その言葉に、くしゃり、と家康の顔が哀しげにしかめられた。
「家康?」
お前も、哀しいのか?半兵衛様が亡くなったことが?
豊臣臣下として多少の情は有ったかも知れないが、そこまで家康が半兵衛のことを慕っているとは思えなかった。むしろ、畏敬していたくらいだから。
「あの人の迫力には、負けるよ」と苦虫を潰したような顔で呟いていたくらいなのに。
「…お前も、」
声に出して訊こうとした時、頬を撫でられた。涙を拭われるように。
「お前は」
苦しそうに呟いて、家康は苦い顔で笑った。
「儂がお前をこうして慰めるのは、当たり前だと思っておる」
「なにを…」
「ごめんな」
あ。
三成が小さく悲鳴のような声を漏らしたのは、今度は太く男らしい指ではなく、唇が己が瞼に降ってきたからだった。
そのまま残った涙を吸われれば、今まで感じたことの無いような熱く柔らかな感覚が身体の芯から沸いて出て、思わずつい、と首がのけぞる。
自然と頬に滑った家康の唇がそのまま落ちて、ぴたり、と自分の薄い其れに重なるのを感じた時、押し退けようとしていた腕がゆるり、と落ちた。
いつの間にか小雨になっている闇の中、木の葉が舞い落ちるくらいの微かな間、触れた唇が離れれば。
信じられない、というように見開かれた苔色の瞳はやがて黒い睫毛と共に伏せられて、三成は力なく家康の胸に腕を押し付け――引き剥がした。
「――三成」
それを止めることはなくとも、縋るように握られた手の熱に、「ああ」と三成が呻いた。
「…お前も」
「…え?」
「お前も、そのような目で私を見ていたのか?」
再び涙を湛えだした瞳に問いただされて、家康の表情が怪訝に曇る。
「お前、“も”?」
どういう意味だ。
家康の険のこもった問いかけに、三成が深くうな垂れたまま、言葉を続ける。
「……私は、“秀吉様の子飼い”ゆえ」
ふふ、と自嘲する乾いた声が、痛々しく響く。
「陰で云う者達が居るのを、知らないわけではないだろう?家康。私が秀吉様に重宝されているのは――」
「もういい分かった」
家康の瞳が苦しそうに歪められ、無理矢理三成を引き寄せた。
「とりあえず、そいつらは今度ブン殴っとくから」
後で名前を教えろよ。
そう云われて「阿呆か、貴様は」と応え、くくく、と三成が嘲う。
「お前にだけは、そう思われとうない。秀吉様はそんな御方ではない」
三成の言葉に「ああ」と頷きながら応えた後、家康は静かに問うた。
「…だからお前、ずっと誰の想いも拒んできたのか」
三成ほどの美男子なれば、恋情の類は嫌でも寄せられるものだろうに。
不思議と、彼はどの相手からの恋文も受け付けなかった。時に人気無い場所で縋るように想いを吐かれても、眉ひとつ動かさず振り払っていた。
相手が女であろうと男であろうと。
「…私と繋がれば、秀吉様の寵愛を享けられる。そう思う輩からのしつこい言い寄りには、飽いた。あわよくば、私を抱こうなどと」
三成が、顔を背けながらうな垂れる。
雨に濡れた白いうなじが露になれば、どれだけそこに噛み付いてやりたいか、まざまざと想い知り家康も視線を逸らす。
「…だからって、儂がお前をそういう目で見てるって、まさか」
「想わん」
きっぱりと言い切られて、家康の顔が混乱で情けなく歪んだ。
「お前は、私を自分の為の道具になどしない。解っている。竹千代」
「わかってんなら!」
鼻と鼻の頭が触れ合うほどに詰め寄られて、三成は慌てて顔を伏せたが、家康に頬を掬われるように撫でられて、諦めるように、呟いた。
「…怖い、のだと想う」
「怖い?」
「よく、解らないのだ。恋い慕うという、こととか。何故、こんな。身を引き寄せられて」
そこまで云った時。
三成が「あ」と勝手にひとりで、眼を大きく見開き頬を上気させた。
「? なんだ」
家康が不思議そうに尋ねる。
「……でも。嫌、ではない」
「え」
「嫌ではなかった。お前だったから」
三成が苔色の瞳を伏せながら、白い肌を紅く染め上げた。
其はまるで丹精に創り上げられた人形のようで。
つられて自分も耳まで熱くなっていくのを感じながら、家康は息を呑んで彼の人の答えを待った。
「私は。私には、竹千代…」
長い黒鳶色の睫毛がつ、と開かれて、彷徨う視線が家康を捉えた。
「――気付かなかったのか?竹千代」
切羽詰った瞳――こんな表情、見たことなかった――で、問われて、家康も「へ?」と間の抜けた返答を。
「お前が竹千代だった頃から、多分…」
そこまでなんとか必死で言葉を紡ぐと、三成はきっ、と眉をひきつらせて、拗ねたようにどん、と拳で家康を叩いた。
「よく解らん」
「それでは、儂にもよく解らん」
少し苦く笑いながら。家康が宥めるように、三成の肩を撫でた。そっと。
「では、何故あんな」
耳の先まで紅く染めながら、顔を背ける三成に。家康はさらりと云ってのけた。
「そりゃあ、惚れておるからな」
その言葉に、三成の目がこれ以上は無理、という程に見開かれ、冷えていた頬がまるで湯のように熱くなるのを、彼は感じた。
「…して…」
よりによって。
今夜。
花が無残に散る夜に。
それでも。
ままよ、と頭をもう一度、今度は己から彼の人の広く逞しい肩に預けてみる。
一瞬の戸惑いの後、太く男らしい腕は、濡れた薄い背中に回された。
「家康」
擦れた声で、縋るように呟いてみる。

みつなり。
だいじょうぶだ、儂はここにおる。
お前が許してくれるのならば、ずっと

つらつらと、戸惑うように、だが心からの恋慕を以って囁かれる言の葉に、思わず笑んでしまいたい。だけれども。
どうして。
よりによって。
もしかしたら。
私達は。

そこまで考えた時、家康が
「三成、とにかくこのままではお前は風邪をひきかねん。すぐに湯を用意させるから、頼むから」
と、冷えた背中をいたわるようにさすってきた。

ふっと、沈んだ意識が喪失の井戸から引き上げられて、現に戻る。
そっと家康の肩から顔を上げると、三成は静かに、至極静かに、山吹色の瞳に問うた。
「私は」
掠れた声音で、ひとつ。涙を零しながら呟いた。
「赦して貰えるだろうか」
あの方に。
それでも。
静かに目を閉じながら、彼の唇が降るのを待つ。
「――三成」
その問いには応えられず、だが己の想いを止めることなどもっと出来ずに、流れるままに家康はもう一度、冷えた薄い唇にくちづけた。
微かに首を傾げて其れに応えながら、三成の頬に涙のすじができて、耳にはぱさり、となにかの花が――花が落ちる音が、聴こえた。


花が散った夜だというのに。


この温もりを、引き剥がせない。
私は、赦されるだろうか。

いっそこの身ごと想い、散華したならば。
涙は止まって
枷は外れて。


そうしたなら
私は何処へ?


始まってしまったことの怖さにふと気付き、思わず三成はきつく、きつく家康の腕を握り締めていた。
始まってしまった雨の中。
散華の夜に。




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ゆみのや

Author:ゆみのや
戦国BASARA3の石田三成にぞっこん一目惚れいたし
こっそり応援し隊所存にございます。

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