BASARAの石田を幸せにし隊。

戦国BASARA3の石田三成をひたすらに応援するこっそり避難ブログ

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散華夜 上巻

ゲーム本編発売一週間前記念
家三SS。
長いので上・下に分けて公開いたします。

半兵衛と三成、運命の刻。


拍手いつもありがとうございます。
とても励みになっております…!



佐吉 いいかい
君はいつか豊臣軍総大将と成るんだよ
大事な子なんだ



君のために犠牲が出るのは当然のことなんだ
だから おのこがそんな簡単に泣いてはいけない


数多の屍を踏み越えて
その毛色を鬼灯色に染めて
それでも笑っていて

大切な子

泣いてはいけない
正しいのだから


泣いてはいけない。
私は、豊臣の子なのだから。












ざんざんと、黒い甲冑の集団が整えられた城の大手門への砂利道を踏みしだく音が、慌しく響き渡っている。
その先頭を率いる紫苑の銀髪の将の、滅多にない焦りと戸惑いの滲み出た様に、あちこちで女中や下男、小姓たちの不安げな囁きが伝染していく。
「――どういうことだ」
苛立たしく、だが背筋を美しく張り詰め歩を進めながら、石田三成は傍に影のように控える親衛隊の一人に問うた。
「それが、余りにも急で」
「分かっている。私の耳にも届かなかったのだから」
クッ、と、大きな吊り目の目元に皴が寄る。三成が苛立たしさを隠さない時の仕草だ。
「秀吉様が御一人で、奥州は葛西家の叛乱を食い止めに行ったのは何の為だというのだ…!」
これでは。
意味が無いではないか。
三成の怒りさえ滲みだしている呟きに、親衛隊員も「は…」と畏まるばかりで。
「まさか竹中様にあのような御力がまだ残っていらっしゃるとは」
「そのようなことを云うでない!!」
三成の怒号に、「はっ」と親衛隊員達はただ頭を垂れた。
「養生さえなさっていれば…まだ…きっと…」
じわり、と自分の目頭が熱くなったことに気付き、三成は思わず黒い手甲で自分の目元を覆う。
「半兵衛様…」
彼の人の名を呟いたその時。
大手門から真白の艶毛の馬に乗り、軍を率いて今にも出陣しようとしてる、竹中半兵衛の姿が見えた。
「――半兵衛様ッッ!!」
三成の必死とも言える叫びに、静かに、蒼褪めた顔の竹中半兵衛はその子を見た。
「三成」
その声音はとても優しく、労わるかのようで。
「どういうことなのですか、中国攻めは黒田殿に任されている筈で!!」
「もう官兵衛君だけでは手に負えない」
美しい、女人のような蒼褪めた唇から。
竹中半兵衛はいつもとまったく変わらぬ涼しい凛とした声音で、馬上から静かに三成を見下ろしならが告げた。
「朝鮮攻めを毛利があそこまで頑なに拒むとはね。お陰で西海の鬼もだんまり。島津が手をあぐねている間に、なんとしても毛利を…」
そこまで云った時。
一瞬、美しい細い喉が引きつり、半兵衛は激しい咳と共に――真紅の鮮血を口から吐いた。
「半兵衛様ッ!?」
思わず三成が駆け寄り、無理にでもその身を馬上から降ろそうとしたが。
ぱしり、と黒い甲冑に包まれた手を拒むと、半兵衛は懐から布を取り出しそれに無理矢理血を吸わせた。
「――大丈夫だ」
「そのような…なにが、どう大丈夫なのですか!?」
三成の大きな瞳が、悲愴に滲む。
「お願い致します半兵衛様、黒田殿だけで事足りぬならば、私が中国攻めに増援として――」
「君には無理だよ。相手はあの毛利元就。氷みたいに綺麗な顔の下に、どれだけの手を潜ませているのやら。場数を踏んでいない――ましてや、君は軍師ではないんだよ。僕は、君を…ッかっ」
まったくの平静な口調とは裏腹に、久々の外気、そして無理を圧しての戦支度に既に消耗している豊臣を支える戦国随一の軍師は――誰もが見ても解るほどに、削られていた。残されたその時間を。
「半兵衛様…」
馬上の半兵衛を縋るように見上げていた三成は、くっ、と唇を噛み締め拳を固く握り――次の瞬間――さっと白月の地の豪奢な羽織を翻し、その場に美しく膝を折り、正座した。そして、ばっと頭を垂れ、地面に額をつけた。
「――逝かぬで、くだされ」
元服し、己が兵を持たされ、親衛隊を駆り今や豊臣軍筆頭を成す――将が、その紫苑の銀髪を、真白の額を砂にこすり付けていた。
「半兵衛様」
「みつ…なり…!!」
深い紫苑の瞳を見開いて、半兵衛が震えながら――馬上から静かに降りて。膝を折りながら、三成の前に。
「佐吉を置いて、逝かぬでくだされ」
その声音は、震えていた。その肩も、震えていた。
ああ、と。
半兵衛の口からも声に成らない嗚咽が漏れた。だが、震える肩をしかと支えながら、竹中半兵衛は毅然と、目の前に伏せる――愛しい子に告げた。
「面を上げるんだ。石田三成」
「……」
三成は動じない。
「上げよ!!」
腹から吼えるような、滅多に聞かれぬことのない半兵衛の怒号が、大坂城の大手門に響き渡った。だが――
「…ッッ!!上げませぬ!!半兵衛様が秀吉様ご帰還なさるまで、ここ大坂城に留まると云うてくださるまで、この面はッッ…上げませぬッッ!!」
最早悲鳴に近い三成の声音に、息を止めて周りに控えていた――まず、“冷酷無比”で名高い――三成の親衛隊から、啜り泣く声が上がった。
次に、周りに控える将から。次は、小姓、雑兵たちに、騒ぎを聞いて駆けつけた女中たちの間から。
「おいたわしや…」
「三成様…」「半兵衛様…」
「天はなんという仕打ちを」
豊臣の名の下に集い、仕え、秀吉と半兵衛、そして――その跡目を継ぐであろう石田三成に仕え、その理想と野望を信じ集い、翻弄されつつも共に在る者たちが――皆、三成と共に、泣いていた。
「佐吉を…ッッ置いて逝かぬでくだされッ…!!」
その声音は、もう成人のものなのに。
半兵衛の耳には、あの頃のまま。そう、前触れも無く秀吉に連れて来られたあの日のままの、幼い佐吉の声がはっきりと響いていた。



   はんべえ さま
   はんべえさま
   さきちは きょう これだけおぼえました

   えらいね
   佐吉は本当に賢い子だ

   僕と秀吉の、大切な豊臣の子だよ



全てが今、余りにも鮮やかに脳裏に甦る。
長かったような短かったような、激しくも切なく、緋色に染まった幸福な日々を。
最早。
「三成……」
半兵衛が、震える手で、大きくなったその子の背中を撫でた。
「佐吉………」
その呼び名に、一瞬、三成の背が強張った。
「馬鹿な子だ」
泣きながら。
決して泣くまいと誓ったのに。
病んで細りながらもなおも、美しい白い長い睫毛を濡らしながら、半兵衛は三成の背を撫でながら、泣いた。
「本当に…愚かな子だ…」
「…逝かぬで…」
それでも、三成は繰り返した。

   逝かないで。逝かないで。
   どうか、せめてあの方が帰ってくるまで。
   三人で。
   最期ならば、あの方と私で、あなたの手を握っていたいのに。

「そのような弱きことで、何が豊臣の子か」
そう云いながら。
細くなった腕にあらん限りの力を込めて、半兵衛は無理矢理三成の土下座を解いた。
「分かるね、佐吉」
「…半兵衛様…!!」
もう、周りなど目に入らぬように。
三成は自分よりひと回りも痩せ細ってしまった育ての親の胸に縋り、声を上げて泣いた。張り裂けた胸をなんとかしようと、もがく様に、泣いた。
半兵衛はその頭を黙って抱き締めていたが、やがて人込みを掻き分けて進んできた山吹色の装束を纏った徳川家康が石田親衛隊に留められているのを見つけ、潮時と察した。
「泣くんじゃないよ、佐吉。おのこがそんなに簡単に泣いてはいけないと、僕は何度君に云えばいいんだい?」
男らしい秀麗な眉になった。
三成のぐしゃぐしゃの顔を撫でつつ、本当に心からそう想った。
大丈夫。この子はもう大きくなった。
「は…んべえ、様ッッ…!」
「――僕は行く。崩れかけている朝鮮への足元を固め直さねば。毛利は手強いけどね、僕ならなんとかしてみせるさ」
秀吉のためにね。
静かに、だが力強く続けられたその言葉に。
三成は嗚呼、ともう一度うな垂れた。
もう、この人を止める術はないのだ、と。
この人もまた、もののふであったのだ、と。
豊臣の――秀吉の夢が未だ途中ならば、この人は静かに誰かに看取られながら最期を迎えるなど、決して選ばないのだ、と。
「…はい…」
「三成、君は秀吉が奥州から戻るまで、決してどの輩にも大坂を攻めさせてはいけない。獲られてはいけない。分かったね」
「…御意に…御座います…ッッ!!」
居を正しながら。だが、涙は流れるままに、三成は頷いた。
「半兵衛様のご教示を…この石田三成、決して…決して…!!」
「うん」
三成の頬を優しく自身の外套で拭ってやって、半兵衛はしばらくその顔を、焼き付けるように見詰めていた。
病でこけた頬に、一時だが赤みが戻ったようだった。
「うん。いい子だ」
ぽん、とその頭を撫でる。
「大丈夫。君なら出来るよ、佐吉。僕の大切な子」
「半兵衛様…」
「――いや、石田三成。後は頼んだよ」
さっと、半兵衛がその背を翻した。
本紫の美しい外套が、あの頃のように三成の目の前を舞った。
幼い頃。
秀吉と共に、雄々しく出立する時の、あのままに。
「――はっ!!」
ざっと立ち上がり、三成が頭を垂れる。
そして、涙で真っ赤になった瞳で、叫んだ。腹の底から。大坂城中に響き渡るように。
「竹中半兵衛軍師、ご出陣なり!!」
おおおおおおお、と、その場に居たつわもの達が鬨の声を上げた。
その中に。
ただ一人、微動だもせず、凛と立つ白い鳥のような三成を見詰める山吹色の瞳。

   ああ 君は

その人物を見とめ、半兵衛はくすり、と苦く笑った。

   君は、いつも佐吉の心を掻き乱すね。
   だが、果たしてその子をその腕に抱けるかな。

今はもう、自分の紫苑の瞳を真っ直ぐに見詰めている、三成の苔色の大きな吊り目を愛おしく眺めながら。
半兵衛は想った。
 

   この子の目には、豊臣のミライしか映っていないよ。徳川の。


半兵衛は微笑んだ。
想ったとおりに育ってくれた。望んだように、成ってくれた。
みつなり。さきち。
僕の大切な子、と。





「――逝かれるか」
独り。
暗い、陽の射さぬ堂の中。
大谷吉継は数珠をじゃらり、と鳴らしながら目を細めた。
「潔し、かな。後は任されよ。竹中殿」
















それから一月の後、竹中半兵衛、陣中にて病に伏し、そのまま逝去――と。
中国と氷の様に固まって睨みあったままの陣中から、報せの早馬は来た。
奥州を平定した秀吉が慌しく戻った大坂城は、主が戻ったというのに、まるで太陽を半分失ったかのように、沈黙と喪に包まれた。



美しく花に埋もれた亡骸は、そのまま彼の地で葬られた、と、涙に滲む黒田官兵衛からの書状を二人で読み上げた後、三成は秀吉の膝元に崩れ落ち、号泣した。
秀吉は微動だにせず、ただ、静かに――余りにも静かに目を閉じていたが。
やがて、咽び泣く三成の肩に大きな手を添えると一言、云った。
「泣くな。三成」
だが、三成は頭を横に振り嗚咽のままに泣き続けた。
「秀吉…さまっ…半兵衛様が…!!…」
「泣いてはならぬ」
静かに。だが、覇王の威圧を以ってかけらた言葉に、三成の嗚咽が止まった。
「泣いてはならぬ、三成。我らが半兵衛の為に涙するのは、我らの夢が――現になるその時ぞ」
「秀吉様…」
はっと見上げた先に、強く、厳しく――だが、幾多の喪失とそれを踏み越えて抱えた哀しみを潜ませた――覇王の視線。それは三成が幼い頃からの変わらぬ慈しみを以って、彼を捉えていた。
「その時まで、その涙は取っておくのだ。よいな」
「秀吉様…!」
「…その時まで。半兵衛の分まで、我の為に…傍に居れ。よいな。その時まで、お前が半兵衛の元へ逝くことは、我が許さぬ」
続いた言葉に、三成は息を止めた。
嗚呼。この御方は。この御方こそが。
私の命を、捧げる主。
「…御意…!!」
深く、深く頭を垂れて。三成は力強く答えた。
「泣いてはならぬ。三成。お前は豊臣の子なのだから」
「…御意…ッ…」
きつく唇を噛み締めながら、三成は静かに俯いた。
だが、もうその頬に新たな涙のすじは、出来なかった。

泣いてはいけない。
豊臣の子なのだから。
強く、正しいのだから。
泣く理由など、存在してはいけないのだから。











見当たらないのです。

三成の乳母(めのと)であった侍女の蒼褪めた顔に、家康はやはり、と立ち上がり具足を掴んで大坂城の暗い廊下を小走りに進みだした。

三成様にとって、半兵衛様は産みの親御殿よりも、親御殿でありました故

知っている。
まだ幼かった頃、一時、織田家に人質同然で引き取られていた時。
まだ織田傘下ではあったが、下手をすれば一国以上の軍と領地を任されている――秀吉のもとへ預けられた時から。
初めて逢った時も、三成――佐吉は、半兵衛に手を引かれていた。
最初は本当の親子かと思ったくらいに、似た毛色の二人を。
佐吉を見詰める時の、戦場でもののふとしても怖れられる軍師の、信じられないくらいに穏やかで温かな瞳を。
それを失ったのだ。
あいつは。
くっと、家康は舌打ちをした。
花を愛でる。
あの細く折れそうな視線を。想いながら。
崩れるなよ。
知らず知らず、呟いていた。
無理をするな、三成、と。
そして見つける。
哀しいくらいに、解ってしまっているのだ。自分は。
こういう時に、あいつがどうしたいのかを。
いつの間にか月は厚い暗い雲に隠され、大坂城をどしゃ降りの雨が包み込んでいた。


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ゆみのや

Author:ゆみのや
戦国BASARA3の石田三成にぞっこん一目惚れいたし
こっそり応援し隊所存にございます。

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