BASARAの石田を幸せにし隊。

戦国BASARA3の石田三成をひたすらに応援するこっそり避難ブログ

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雲路の果て 前篇

ようやく書き上が……る、途中ですがもう前篇投下します。

「真田幸村伝」ベースの家三。

さこかつとダテサナ蒼紅も入っておりますので、ご留意ください。
また、今までの作品に出ていたオリジナルの登場人物、新たに創作した脇役なども出ておりますので、ご留意ください。
あと史実に沿ったエピソードも多いです なんか前書き多くてすいません

久々の連載…? 一週間程で続きUPする予定です。
文字数にもよりますが、長くても三話で完結予定です。
宜しくお願い致します。





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 しとしとと、秋雨の季節の始まりを告げる霧雨の中を。
 其の男は笠を深く被り、雨が降り出す前からまだ暑さを残す季節の中を、蓑で身を覆い、京は六条河原を音も無く歩んでいた。
 やがて人だかりの在る――幾百年も、血で血を洗う戦の果てに、“罪人”として多くの者の首が晒されている其処――首斬地蔵が見守る横に。
 男は辿り着き、背の高さから無理に前に出ることもなく、ひそひそと「無念じゃろうなぁ」「なんまんだぶなんまんだぶ」「これで豊臣の世も終わりじゃなあ」と囁く群集の後ろで。
 男は初めて、人目を憚らず笠を高く上げて――
 板の上に晒されている首を、見た。
 瞬間、息を止めて眼を見開く。そして――


「……じゃ、ない」


 彼の零れ落ちた声音に、一人の商人風情の男が振り返り「?」と首を傾げて。
「あんさん、今なんと?」
 京言葉で問われて、男ははっと笠を深く被りなおすと、問いには答えずざんざんと晒された首に向かって歩み寄り。
 周りの者が驚いてざわめく中。男はしかと凝視した。
 晒されている、銀髪に――この国では珍しい程に蒼白い肌を、死して紫に朽ち逝く其の色に。
 きつく無念に閉じられた瞼、食い縛られた薄い唇――
 だが。
 だが、“コレ”は違う。
 あの人ではない。

 一瞬で其の真実を悟った男は、本降りになりだした雨の中、散らばり出した群集、そして「あんさん、待ちなはれ――! あんさん何といわはったんや――」と声を掛ける商人を振り払い、風のように河原から掻き消えた。





 暗く、何処までも暗く深い――奈落のような闇の中。
 泥土に沈められたかのような意識と身体の重さに気付いた、次には。
 ふいに瞼に光が射してうっすらと明るくなり――次に、そのことが信じられなくて、三成は重くたゆたう意識を引き上げた。
 目を開けた其処には――此処は大坂城なのだろうか、と想う程に豪奢な金箔の地に花々が散るのを、漆に塗られた黒木が囲う天井で。
「……此処は……」
 発せられた己の声音が、驚くほどにしゃがれてか細いこと、そして――
「……ぐっっ……」
 全身を貫く痛みの重さに、三成が再び瞼を閉じて顔を歪めた。時。
「――お気づきなされましたか……!!」
 其の声に、混乱する記憶の中――遠く遠く、初めて自分がこの声の主と出逢った、酷く明るい、そう、あれはまだ“佐吉”と呼ばれていた頃――
「……そ、んな」
 必死で首を捩って己の左へと視線を動かした先に。
「信乃……!?」
「三成様……!!」
 嫗は、真っ白な髪を高貴な藤色の打掛の上に流していて。
 その姿は、大坂城で侍女頭として――そして、竹中半兵衛から「今日から君の乳母につけるね」と告げられた後、たおやかに優しい笑みで「佐吉殿、よろしうお願い申し上げまする」とこちらの顔を覗き込んできた頃と変わらぬ、かつての大切な――
「そ……んな……」
「ようございました、よう、ございました……!!」
 涙をほろほろと零しながら、彼女は大坂城でそうしていた頃と同じように佐吉――三成の傷だらけの手を握り締め。
「もう何も案じなされますな、信乃がついておりますよ」
 其の言の葉に。
 三成の淡い苔色の双眸にも涙が知らず知らずに溢れだして。
「信乃……」
「たれか!! たれかある、三成様がお気づきなされた、はよう医者を寄越しなされ!!」
 やがて慌しく侍女らや医者が己を囲み、薬を飲まされたり包帯を替えられたりしているうちに、三成は己が何故未だ生きて――そして此処は何処なのかを問うことさえ忘れ、ただ優しく己を見詰めてくる、かつての乳母にあやされるままだった。



豪奢な床の間に寝かされた三成が、此処までの子細を思い出して取り乱す前に、信乃はしかと彼の手を握り締め、「ようお聞きくださいませ」と。今のことを告げた。
 天下分け目の関ヶ原、小早川秀秋の裏切りで総崩れとなった西軍――要と成る筈であった毛利が動かぬまま、左近隊は東軍の火縄銃の雨に撃たれ散り散りに、大谷刑部も小早川軍に追い詰められ腹を切って――全てを悟り、般若の如く家康の控える本陣へ突進した三成は家康との一騎討ちとなり――死闘の末、己は止めを刺されずに家康に密かに匿われ、今此処にこうしていること。
 秀吉亡き後、不穏となった大坂城を下がって竹中の家に帰っていた信乃を、家康が嘆願して此処――江戸城へと呼び寄せて、三成の世話をするようにしたこと。
 そして。彼女はそら怖ろしいことを、最後に告げた。
「三成様、三成様が自ら御命断つ時は、信乃が死ぬ時となりましょう」
「……な、んだ、と……?!」
 眼を見開く三成の頬に皺の寄った手を添えながら、信乃は続けた。
「家康様はほんに怖ろしいお方」
 静かに首を横に振りながら、信乃は声音を低く潜めて。
「今更、美濃の田舎に下がったこんな婆に何の用があって、とわたくしも不思議に思いました。それは、三成様……貴方様を生きながらえさせることに他ならなかったのにございます。家康様は――」

 三成はきっと、関ヶ原で散った豊臣の者たちの後を追おうとするだろう。だが、ワシはそれをよし、としない。だから信乃殿、かつて三成の乳母であった貴女の命をワシが握らせて貰う。三成を決して自害させないでくれ。
 三成がもしも自害してワシの手から逃れたならば――其の時は――

「信乃の命を貰い受ける、とあのお方は仰いました」
「な……ッッ……!!?」
 関ヶ原で負った傷のせいで動かない全身を、堪えられない悪寒が襲い――次の瞬間、納得してしまう己にも寒気がした。
 そうか。あの男は未だに――
「信乃はそれでもよいのですよ」
 ふっと。
 酷くやさしく微笑みながら、嫗は三成の手をしっかと己の両手で包み込み、彼の瞳を覗き込みながら。
「三成様が秀吉様の、半兵衛様の……大谷刑部様の後を追う、と云うのならば、信乃は共に冥途に参りまする」
 其の微笑に。言葉に。
 三成の記憶が一瞬にして、花が咲き乱れ金色に彩られた美しい大坂城の、栄華極まる頃に――己がまだ佐吉だった頃に引き戻されて。
 
 佐吉殿、佐吉殿
 さあさ、こちらへいらっしゃい
 信乃がやって差し上げましょうね

 親元から離れ、幼いながらも必死で子飼いのひとりとして務めようとした、己をいつも優しく見守ってくれたこの嫗を――
 死なせるワケにはいかないと。
 何よりも、彼女は竹中半兵衛縁の者なのだ。
 関ヶ原で多くの豊臣縁者を死なせてしまい、そのうえ静かに余生を送るはずだったこの者の命をも、奪えるものか。
 家康への憎しみ、怒り、激昂よりもなお。あの苛烈でありながら、美しく緋に染まった豊臣での日々の木漏れ陽のような大切な記憶。想い出。その一部である彼女を、無残に己と一緒に道連れにすることなど。全てを失った今だからこそ。
 幼かった佐吉が、必死で今の、闇で染め上げられた己を遠い想い出の中から見詰めているのを感じながら。三成は云った。
「……信乃……」
 苦しく眉間に皺を寄せながら、三成は確かに声に、言葉にした。
「私、は。お前を無下に死なせることは……しない……ッッ」
 たとえそれが、自らの誇りを捨て去ることであろうとも。
 これ以上、何も奪えない。奪わせない。
 最後に残された絆――豊臣の、大切だったひとたちとの繋がりを。
「……佐吉殿……」
 そう、幼名(おさなな)で己を呼んで、涙を流しながら顔を寄せてくる嫗に。
 三成は頷いて、受け入れねばならぬ、と密かに覚悟した。
 せめてこのひとを家康の手から逃すまでは、生き延びねばならない、と。





 秋の深まる、一足先に冬の気配さえ近寄る奥州に到着し、馬も、それに乗る男も荒々しく息を切らしていることに――彼の人がやってくるのを櫓から見つけ、城門から出て待っていてた――蒼い黒髪を顎までに切り揃えた若武者は。「どう、どう」と。泡を吹いてる馬の頬を叩きながら落ち着かせて。
「――左近!」
 馬上の男にそう呼びかけたのは、かつて織田家で謀叛を失敗に終わらせた後、信長によって飼い殺しにされていた柴田勝家そのひとで。
「勝家」
 迎えに来てくれたんだな、と一瞬だけ酷く優しい笑みを浮かべた――京は六条河原から眠る間も惜しんで此処、奥州へと舞い戻った左近だったが。馬を降りながら息を切らす尋常ならざる左近の様子に、勝家は「どうしたのだ?」と戸惑いながら。
「勝家……竜さんに……俺ァ竜さんに直ぐに伝えなくちゃいけないことがある……!」
 そう告げると、己についた泥も落とさずに「たれか! 悪いがコイツの面倒をみてやってくれ、無茶させちまった!!」と、慌てて出てきた伊達の若衆に馬を任せ、ずんずんと政宗の居るであろう本丸へ向かう左近の後ろを、勝家も慌てて追った。



 織田家が明智光秀の謀叛により滅亡した頃、柴田勝家は討伐を命じられていた奥州にて、その“未来(ひかり)”と出逢っていた。
 奥州筆頭、伊達政宗――
 隻眼の竜の眼は、たった一度の過ち故に、魔王に地に堕とされ飼い殺しにされている若者の傷を一瞬で見抜いたのだ。
 数手の内に勝家の手から逆刃薙を弾き落とし、政宗はこう告げたのだ――「アンタ……まるで、片目を失った時のオレじゃねぇか」と。
 そして流す涙さえ忘れた筈の勝家の翠の眼から一筋のひかりが零れ落ち、蒼い竜は彼を抱き起こして「さあ、アンタの未来を獲り返すんだ」と、己の懐に抱え込んでやって。
 打倒魔王を掲げ西へと進む筈だった志こそ明智の謀叛で“打倒・豊臣”となったものの、あの時から柴田勝家は伊達政宗と其の右目、片倉小十郎の傍で未来を取り戻す為の戦いを続けていたのだった。
 そして――
 豊臣とのぶつかり合いの最中、勝家が出逢ったもうひとつのひかりが島左近であった。

「――あんた、なんで伊達軍にいんの!?!?」

 小田原城へと先鋒として切り込んだ時、それに立ち塞がった左近が目をまんまるにして己に問うてきたことに、反対に驚いて。
 
何故、この男は私のことを見知っているのだ――?

「……ふぅーん、そっか」
 やっぱ忘れちゃってるのね、と。
 勝手に納得した左近が次には「よかった、生きてて」と。
 にぃっと無邪気に微笑んだことを、今でも勝家は鮮やかに想い出せる。
 政宗とはまた違う、地を這いずる様に必死で路を探す己を照らし出すような、輝くような笑みを。
 其の笑みが知らず知らずのうちに己の中に沁み入って、何度も伊達の先鋒、豊臣の斬り込み隊長、とぶつかり合ううちに「やっぱ強えな、あんた!! 最高だぜ!!」「その軽口も、今日までだ!!」と――政宗の言葉で云うならば“Rival”のように感じ出すまでになった頃に。
 ふいに、危険を顧みず敵陣の己の寝床に現れて、「よく考えたんだけど」と。
 よくもまあ、此処まで忍び込めたもの、と目を丸くしている勝家に向かい、左近は「俺やっぱ、あんたのコト好きなんだ」と。
 好きなんだ、と。
 告げられて、あれよあれよと押し倒されて。

 あ、嫌ではない。

 左近の匂いは何処までも汗臭くて男の匂いに他ならなかったのに。芳しい――かつて恋慕った女人の纏っていた馨りとは程遠いモノであったのに。
 其の首に顔を埋めて、抱き締めてしまったから。
 誰にも云えないままでふたりの恋は始まって、秘めたままで事は関ヶ原まで進んでしまった。
 何度も文で「徳川方は豊臣を滅ぼそうとしている」「石田三成は大丈夫なのか」「お前は大丈夫なのか」と案じていたが、雲行きが怪しくなるに連れて「大丈夫だ」「案ずるな」「俺はきっと生き延びる」「豊臣の為に、三成様の為に戦い抜いてみせる」と寄越してきた文が途絶え――
 関ヶ原に東軍として参じながらも、勝家が必死で乱戦の中探し出したのは――
 徳川と小早川の火縄銃に貫かれ、息も絶え絶えの左近で。
 それだけではなく全身に斬り傷を負い、片目からはどうどうと血を溢れさせている彼を必死で抱え込み馬に乗せ、無我夢中で伊達の本陣まで連れ帰り――
 呆気に取られている政宗と小十郎に向かい、勝家は「どうか、この者を匿うこと、御許し下さい」と。
 翠玉の大きな眼を潤ませながら、必死で見上げてくる勝家の様に拒むことが出来なかった双竜が居て、島左近はあの関ヶ原を生き延びることとなった。



 そして今。処は奥州・青葉城。
 勝家からの申し出に応え、奥州筆頭――今は名実共に東国を束ねる――それも関ヶ原の大戦に勝利し、天下統一を成して幕府を開いた家康の名の元ではあったが――伊達政宗は、右目である片倉小十郎と共に、自分と同じく右目を失った島左近の前にどっかと胡坐をかいた。
 最初、関ヶ原の混乱の最中から勝家が瀕死の左近を連れ帰り、涙ながらに「どうか御慈悲を」と頼んできた時は面食らって言葉を詰まらせたが。
 主の為に全身に銃弾を浴び息も絶え絶えになりながらも、うわごとで「三成様」「家康を」「三成様」と繰り返す、そしてそんな彼を必死で抱き締める勝家の姿に絆されて――匿ってしまい。
 最初は「これはもう助からないのでは」と危ぶんだ若武者は、勝家の献身的な介抱に応えて、元のように双刀と蹴りを放てるまでに回復した。
 だが、右目――其処は弾丸でこそなかったものの、混戦の最中敵から斬りつけられた傷が深く、左近は隻眼の身となったのだった(竜さんとお揃いっすね! と言われた日には、さすがに睨みつけたものだったが)。
 普段は長い前髪に隠されているものの、その傷を見ると多少の憐憫の情も沸いてきて、今、政宗は「確かめに往く」と勝家の腕を振り払い、六条河原へと斬首された三成の首を見るためだけに危険を冒し、風のように帰ってきた若武者に向かって
「で。どうだったんだ」
 と、コトの子細を訊ねた。
「はっ。わざわざお呼び出ししてしまい、忝のう御座る」
「おいおい、オレはあんたを匿ってはいるが、アンタの主君になった覚えはないぜ。堅苦しいコトは抜きだ」
 その答えに、フ、と苦く笑った後「そうッスね」と。
 だが畏まる姿勢は変えずに、左近は京で見た事実を切り出した。

「――石田、三成の首じゃなかった、だと…!?」
「アレは三成様じゃぁありませんでした」

 左近は、政宗の隻眼を見据えながらしかと告げた。
「アレは、あの首は三成様のモノではありませんでした。よくまぁあそこまで似せたとは思いますが……俺は三成様の右腕です。見間違うワケがない。アレは三成様の首じゃあありませんでした」
 其処まで一気に告げると、左近は深く俯いて「……あんま、匿って貰っている身でこんなこと云いたくないんスけど……」と、左近は見える左目で政宗の顔を遠慮がちに見上げながら続けた。
「一度、探りを入れて貰えないッスか」
「……What?」
 左近の言葉に、政宗の眉がひくり、と上がり。
 控える小十郎の眉間にも皺が寄り、「それはどういう意味だ」と、声を上げた。
「……いや……」
 一瞬躊躇いながら。だが、左近もまた眉間に皺を寄せながらままよ、と。双竜に告げた。
「家康が“本物の石田三成を斬首したか”を、です」
 左近の言葉に、政宗と小十郎だけでなく――脇に控える勝家も息を呑んだ。
「……つまり……Boy……」
 お前は、と。
 政宗が竜の眼で、己と同じ隻眼となった左近を真っ直ぐに見据えながら。
「家康が本物の石田三成を殺さずに、何処かで生かしているっていうんだな?」
 問いに、左近は静かに頷いた。
「考えてもみてください。家康は、真田昌幸と幸村を殺さずに九度山に流罪で満足してんですよ。おかしいじゃないですか? 豊臣を天下統一まで担ぎ上げておいて、其処まで担ぎ上げた後で秀吉様を蹴落とした……家康は本当に狡猾な男なんだ。ならばコレを好機、と真田親子を死罪に追い込むことだって出来たハズ。ソレをしなかった……思うんです。あの男にとって、真田親子がどうでもいいくらいになる“何か”が手に入ったからじゃないかって……だから……!!」
 思わず拳を握り締めて語気を荒げる左近に向かい、勝家が「落ち着け左近。確かにお前が徳川氏を憎く想う気持ち、解らないでもない、だが……」と制して。
「それに、真田昌幸と幸村を殺さなかったのは、兄である信之が徳川に助命嘆願したということも考えられるぞ」
 小十郎が低い声音で静かに左近の言葉に割って入った。
「助命嘆願したのが、真田信之でなく、三成様だった……そうも考えられませんか?」
「な……っっ!?」
 左近からの思いも寄らない返答に、小十郎が仰け反った。
「三成様はああみえて、一度身内だと認めた相手にはとことん尽くすんです。真田幸村は……まあ半兵衛様の策略とは言え、豊臣の一員として関ヶ原を……上田から共に戦った……豊臣にとっては、真田は身内なんです。だから、三成様がもしあの男……家康に……」
 Hhmmmm、と腕を胸の前で組んで、暫し独眼竜は隻眼を閉じて沈黙したが。
「……Boyの云うこと、一理あるかもしれねぇな」
「政宗様!?」
 意外な主の同意の言葉に、小十郎が驚いて。
「いやな、家康って男はあの人の好い笑みの下に……どっか、計り知れない暗いモンを抱えている……オレもなんとなく感じてはいたんだ」
「竜さん……!」
 政宗からの思いがけない言葉に、左近がほんの少しの希望を隻眼に宿らせながら顔を上げた。
「あの男は、確かに絆を大切にしている。だが、それは裏を返せば絆のタメならなんでもする……そういうことでもある。己を不遇の幼い頃から守り続けてきた徳川の一門、三河十万のつわものにそれに連なる民草……解るぜ、守る為に時には非情な決断もしてきたはずだ。オレはアイツとは最近からの付き合いだから細かいことは知らねぇが、己が属して共に天下を支えてきた豊臣を裏切った……そして完膚無きまでに滅ぼした、いや、まだ大坂城が残ってはいるが……豊臣の子、秀吉の左腕だった石田を、斬首して六条河原に晒した……そういうことをやってのけるってのは、常人では、並みの心では出来ねぇ」
 感じるんだ、と。
 政宗は額をとんとん、と右手の指で叩きながら。
「あいつの底知れぬ、決して人に触らせようとしない本心……なあBoy、石田は家康にとってどのくらい“大切な”絆だったんだ?」
 その問いに、左近が思わず息を呑んで「そ……れ、は……」と。言葉を詰まらせたので。
「あー……O.K. Okay……」
 左近の苦渋に歪む顔に、これ以上は野暮、と遮ると。
「解った。オレとしても、世間には“死んだ”と見せかけておいてまで、家康が石田三成を生かしておく理由は知りたいモンだし、もし本当だとしたら天下人が世間を欺いてんだ。大問題だろ」
「政宗様、しかし……!」
 いささか危のうございます、と小十郎が政宗にだけ聞こえる様に諌めた。
「あの家康がすべてを欺いてまで隠そうとする、其処には量り難い執着を感じます。もしも石田が家康にとって“そういう”存在なのならば、蜂の巣を突付く愚行となるやもしれませぬ」
 コイツにしては鋭いな、と。政宗が驚いたように小十郎の顔を見詰めた。
「……小十郎も其処まで鈍くはありませんが」
 む、と気まずく視線を逸らして眉を顰めた右目に向かい、政宗は「Ha!」と「Sorry、Sorry? 悪く思うな小十郎」とカラカラ笑って。
「――ってワケだBoy、ちょっと待ってな。ここでおとなしく、な」
「竜さん……ッ!」
 すんません、と項垂れる左近の横に、勝家が寄り添って「万事、政宗殿に託そう。ここで私と待とう」と。左近の肩に手を添えて、案ずるように顔を覗き込んだ。
 その様子にほんの少しの寂しさを覚えつつも、大切な弟分の想い人の為でもある、と。ひいては勝家のタメにもなるであろう、と、政宗は
「小十郎。江戸に上がる、家康に逢う為の理由を作ってくれ」
 と、己が右目に名を下した。




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プロフィール

ゆみのや

Author:ゆみのや
戦国BASARA3の石田三成にぞっこん一目惚れいたし
こっそり応援し隊所存にございます。

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