BASARAの石田を幸せにし隊。

戦国BASARA3の石田三成をひたすらに応援するこっそり避難ブログ

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月白の羽根、水面の翠玉。 Ⅰ

ようやく家三でさこかつだ……っっ!!

いつもの「腐向け」です。

半兵衛様ドラマED後の、家三ベースのさこかつのお噺。

気付いたらでら長い噺になっていたので、まずは第一話。
宜しくお願いします…!!




※相変わらずモ武将よく喋ります。史実エピソード入ります。
 それでも「大丈夫だよ、秀吉」な御方は宜しくお願い致します…!!※




   理由がなんだったかとかどうでもよく
   敬愛し、畏怖すべき彼の人が
   かつてあれ程までに
   憎み誹った 敵の腕の中で
   弦月に照らされて 其れはまるで月下美人の華のように
   美しく 肩を震わせ
   泣いていたので

   何も云えないで ただ見つめることしか出来ない
   見守るコトしか出来ない己と
   自分に出来ないソレを
   いとも容易くやってみせる
   太陽の権現が気に喰わなくて

   
   許しを得ずに城を飛び出した、冬のおわり、春の嵐近い、清か風の日のこと。

   









 竹中半兵衛が遺したモノは、豊臣にとって革新とも云え、そして新たな系譜を指し示し守るタメの完璧な――いとおしんだ“豊臣の未来”、石田三成への贈り物だった。
 かつて豊臣の進む覇の道に異を唱え叛旗を翻した徳川家康は、三河十万の兵をそのままに、「竹中半兵衛軍師の遺志を新たな絆としたい」と、今一度――豊臣の傘下へと帰参したのだ。
 命を賭した半兵衛の“懸け”が、豊臣に“新たな未来”を指し示した瞬間だった。
 覇王の玉座に座しながら、豊臣秀吉は暫し眼を閉じて、何か――何かを辿るように、黙り込んでいたが。静かに紅い眼を開くと、目の前に再び傅く家康に向かい
「よくぞ戻った」
 と。
 赦しの言葉をかけたのだった。
「半兵衛が我と、豊臣に遺したモノ。其の中に、貴様と三河十万のつわものが列すること、間違いは無い」
「……秀吉、殿……」
 彼の言葉に思わず、家康が目を瞠って顔を上げた。
「そして我は、それらの民を只いたづらに軍力として浪費させ、日ノ本の民を疎かにすることをせぬと、貴様に約束しよう」
「な……っ!」
 待ち望んでいた願を、先に秀吉が告げたことに。家康は思わず身を乗り出し
「そのお考え、真か」
 と秀吉に問えば。
「真ぞ。我は今まで只、軍を強くすることのみが富国強兵だと思っていたが、其れは違った。半兵衛は我に、最期に其れを説いて逝った。強き国を産む為には、豊かな国土こそが必要だと。家康よ、三河十万以上の民の繁栄を築いた者よ。これからは我と共に、日ノ本の繁栄を築く為、力を捧げよ」
 豊臣の為に、と告げられ
「――はっ…!! この徳川家康、再び見出したこの新たな絆に、心からの、感謝を……!!」
 と、家康が深く、深く頭を垂れたのを。
 秀吉の左で――三成は、大きな苔色の眼を潤ませながら。信じられない、と今にも零れ落ちそうな泪を必死に堪えながら、ふたたび豊臣の、己の元へと帰ってきた友を。見詰めるのを。
 左近は、憮然とした表情でただ――見守るしか、出来なかった。



 そうして徳川家康は再び豊臣傘下となり、石田三成もまた、かつての友の裏切りを半兵衛の墓前で「すべては半兵衛様のご遺志の為に」と、家康の指が躊躇いながらも己の頬に触れてくるのを、赦した。
 離れて初めて、どれだけ求め合っていたかを想い知った。
 太陽の権現は、己の孤独を癒して呉れる儚い月影を今一度抱き締め、「もう二度と、お前を傷つけない」と泣いた。
 ので、死色の羽根を宿命づけられた月のような彼も「違えるな」と、泣いた。
 そうして再び番った月と太陽なれば、暫く片時も離れることなく寄り添う姿が大坂覇城で見られるのも仕方のないこと。
 大谷刑部の半ば諦めたような言葉に、一人愚痴愚痴と「いやありえねー。ぜってーありえねーッす……」と。
 むくれてみせるのは、三成の腹心、親衛隊――通称・左近隊――の隊長でもある島左近だった。
「あんなに“赦さない”って云ってたじゃないスか……」
「そうよな」
「刑部さんだって“ぬしを赦さん”って云ってたじゃないスか!!?」
「……そうよな」
「じゃ、なんで!!」
「あのな」
 左近よ、と。
 ぎょろり、静かに黒く光る眼を動かし、大谷刑部は己の文机の横、無遠慮にひとの部屋に押し入っている若人に向かい、地を這うような低くしゃがれた声音で続けた。
「われらが赦さなくとも、肝心の三成が赦しておる。徳川をな」
 其の言葉に、左近の明るい吊り目が更に釣りあがって引き攣った。
「其れにぬしも見たであろ。沈黙の賢人――竹中半兵衛重治の、死神さえ遠ざける、豊臣への献身を」
 あの覚悟を、と続けられ。
 左近の脳裏に、まざまざと――あの星降る夜に、命の最期の輝きを、己が心血を注いで育て上げた“豊臣の未来”――三成に託すため、稲葉山城を攻め落とした時のように、僅かな手勢で攻め込んできた人の――覚悟に煌く気高き瞳と、意思が思い出されて。
「ぬしが賢人に“あんたの意思を繫いでいく”と云いおったのは、われの空耳であったか」
「――ッッ!! ぐぬぬ……っっ」
「徳川が戻り豊臣の威勢は最早止まることなし。すべては賢人の筋書きどうり」
 なれば。
 さらさらと。書状に花押を書きあげながら、大谷は静かに続けた。
「われらもまた、私情は捨て太閤秀吉様と、左腕三成のタメ、豊臣のタメに生きるが必定よ」
「……ッッ、でも」
 それでも納得しない小供に向かい、大谷刑部が続けたことは。
「――ぬしは徳川に三成を獲られた、と。想うておるのか」
「――ッッ!!」
 云い当てられたことに、小供は己が駄々をこねているだけだ、と思い知らされた。
 思わず赤面して唇を噛み締める左近から静かに視線を逸らしながら――彼は問うた。
「ぬしと、三成の。左腕に近しモノの運命(さだめ)の糸は、太陽の光如きで焼き切られる程度か」
瞬間。
ふいに、旋風吹くような気配がした。
「――やれ」
 ふてくされた小供が居座っていた――もう誰も居ない場所を振り返り、大谷刑部の頭巾の下に隠された乾いた唇に――
 苦いようなやわいような、微笑が浮んで。
「……試練よな、シレン」
 ふ、と静かに息を吐くと、大谷刑部は何事もなかったかのように、次の仕事に手を伸ばし、静かに筆を走らせた。
 









 次の日、左近隊の副隊長、舞兵庫が定刻の軍議に顔を出さない隊長を彼の自室まで迎えに行き――そこで「左近様なら、もうお出になられましたが」という侍女の言葉に嫌な予感を抱えながら、大坂城を駆け回る羽目になった頃には、肝心の左近隊隊長は既に馬を勝手に乗り出して、東へと走り去った後だった。





 久々に、一人、だな。
 街道を行き交う人馬をぼんやり見詰めながら、ふ、と左近は「らしくねぇ」溜息を吐いていた。
「…………」
 定刻の軍議をすっぽかしたどころか、許しを得ずにこうして一人。
「今度こそ首刎ねられるかもなー」
 愛馬の上で大仰に春の近い、澄んだ青空を見上げながら。左近はいつもの笑顔を取り戻せないままで、それでも東へと歩を進める。
「――でも、三成様」
 あんただって。
 そう独りごちて、想い起こすのはつい昨夜見てしまった――太陽の権現と、月の化身の主の秘め事だった。
 






 うん、解らん。
 そう呟いて――自慢することではないが、フン、と鼻で息を吐くと、左近は三成から「目を通しておくように」と云われた検分書を丸めた。
「えーっと、石田軍の現在の擁する兵力が……で、三成様の兄上の正澄様の手勢が佐和山に四百でー、お父上の軍勢も合わせれば、まぁ西にニラミはココ起点でも……これからの“奥州探題”としてのー、えっとまず最上のヒゲ親父からその役名を~あのオッサン、降伏させるより倒しちまったほうが……いやでもマジ今豊臣手が足りねぇ手が足りねぇ、オマケに? 前田・足利連合軍と、それに加わった雑賀衆の動きも抑えろってか?」
 とんとんと、大坂城の磨き上げられた回廊を。夕暮れも終わりに近付き、弦月が酷く明るく感じられる冬の終わり、春の始まりの花の芳りだす中を。左近は書状を片手にぶつぶつと、三成より「読んだ後に意見を出して渡せ」と命じられていた、兵糧と兵力の配備への答え出せずに、三成の寝床である西丸殿へと向かい歩いていた。
「大体なんで足利将軍家どころか雑賀衆までまるっと前田家に入ってんのよ……もうワケ解らん……あーーーもう、難しいっすよコレ三成様~~!!」
 思わず天を仰ぎながら、左近がようやく広大な大坂城を横切って、“三成様の庭”である西丸殿へ辿り着いた頃には、陽は沈み夜の帳が花の芳りを際立たせ、月に照らされる庭を静かにより美しく魅せていた。
 多分、此処に居るっしょ。
 最近の三成は、春の始まり、ようやく咲き出す花々に気を取られていた。
 あの苛烈な“秀吉の左腕”がそんなにも、己の庭に、育てる花々に心を割く理由は大谷刑部から聞いているが。
 元々、本当はとても繊細で危ういひとだ。
 左近には解っていた。
 石田三成と云う武将――男は、本当は花一輪にも心を寄せるくらいの、繊細で危うい――純粋過ぎる心を持っている男なのだと。
 そう、それは敬愛する主君の為なら死することさえ恐れない、無鉄砲で無茶苦茶で、だけど憧れずにはいられない――真っ直ぐで迷いのない生き様で。
 だからこそ、あの日――「俺にもそんな生き方をさせてくれ」と。命を預けた、賭けた、張ったのだと。
 なんだか昨日のことのようで、それでいて遠い昔のように想いながら。左近は皮で出来た具足を履くと、音もなく三成の庭に降り立って、彼を探し出した。



 やがてなにかよい芳りがするな、と歩を進めていたら。
 甲冑を外して半兵衛から贈られた、京紫の薄い布地の衣装に身を包んだ三成の背をようやく見つけられたので。
 左近が声を掛けようとした、其の時だった。
「沈丁花のよい香りがするな」
「――いえやす」
 その声音は、まるで幼子のように。
 信じられないほどにやわく静かに、三日月夜の西丸殿の庭に響いた。
 だから、左近は思わず息を、歩を止めるしかなくて。
 三成の横に、山吹色の装束を羽織って。
 徳川家康は、さくさくと春の新芽を踏みしめながら――相変わらず太陽のように笑みながら、己の半身の月に寄り添った。
「春が近いな」
「もうすぐ其処だ」
 家康の云うことに、酷く穏かに三成は答えた。
「沈丁花の芳りがしたら、あっという間に桜が咲く」
 奥州討伐の前に花見茶会をせねばならない、と。三成は気付いて「いけない、そちらの為の金子も用立てせねば。左近に兵力の分散を検討させている場合ではなかった」と。思わず口元に白く長い指を添えて苔色の瞳を細めながら。三成は難しそうな顔をした。
 左近、と己が名を出されたことに思わずどきり、としながら。それでも今更二人の間に割って入れず、左近は忍のように木陰に身を隠して息を潜めるしかなく。
「ふうん、最近は左近にそういうコトもやらせているのだな」
 微笑を絶やさずに問うてくる家康に、三成は酷く真剣な顔で答えた。
「あれは剣の腕前は立つが、いかんせん文治には疎いところがある。今からよく学ばせておかねば、私の左に立つ者として事足りないモノとなってしまう。刑部曰く、“育ててやらねば”ならぬ、まだ幼い、未熟な若木なのだと」
 未熟。
 そう云われたコトに――左近は思わずく、と唇を噛み締めながら俯いた。
「まあ、左近はまだ若いからな。ワシらよりも若い、半兵衛殿に幼い頃より育てられていたお前とあいつを比べてやるなよ」
 家康の言葉に、木陰に隠れたまま左近は思わず息を止めた。
「あいつは立派だよ。お前の役に立とうと、必死で喰らいついてきているし、何より明るい性根で皆を和ませて呉れている」
 家康の云うことに、三成も「そうなのだ」と酷く真剣な表情で答えた。
「あれは確かに風紀を乱す、鉄火に懸想するどうしようもないところもあるが、決して私を欺かない。私に命を捧げている。そして、秀吉様にも信を置かれている」
 そこまで云うと、三成がふ、と。
 目元を細めて――家康に何を云おうとして、口を開いたが、ふいに迷うように「ん」と詰まった後。俯いたので。
「どうした」
 と、家康は腰を折り曲げ俯く三成の瞳を下から覗き込んだ。
「……矢張り、お前は私の心を分かっているの、だと……」
 躊躇いながら。
 伏せられた長い睫で瞳を隠しながらも、不意打ちのように想いを告げてくるひとを、思わず抱き締めたい衝動を必死で抑えつつ――家康も「んん」と、唸って。
「……お前が離叛した時、本当に私は心引き裂かれた。お前を友だと想っていたのに、そう想っていたのは私だけだったのだと」
 ふいに己が胸の内を――いたずらに、傍にあった沈丁花を摘んでみながら。三成が語り出す様は、家康にとってはまるで月の化身が羽衣を落として此処に迷いで出たのだ、とさえ映って。
「だが違った。半兵衛様に教えられて、やっと気付けた。お前も国主として、守るべき民達の為苦しんで……でも、今……今は、秀吉様と私と、豊臣と其の理想を成そうとしている」
「……みんな、半兵衛殿の遺業のお陰、だな」
 苦く笑みながら。家康もまた、過去の迷いを辿るように。
「ワシが浅はかだった。秀吉殿程の武人が、太閤の地位にまで昇った御仁が、民草のことを省みない程心の狭い器ではないと……そして、たとえそうだったとしても、三成、お前と共に未来を変えていこう、そう想えばよかったんだ」
 最初から、と。
 胸の内を打ち明けられれば、三成もまた、白い頬を一瞬さっと紅く染めた後。戸惑うように沈丁花を己の胸に寄せて黙り込んだ。其の芳りで己を落ち着かせよう、とでもいう様に。
「……三成」
 優しく呼ばれて一歩、近寄られれば。
 思わず顔を跳ね上げて、彼は彼を見詰め返した。
「今年もまた、お前と大坂城の桜を見られること、本当に嬉しく想っている」
 どこか苦しそうに――それはそう、二度と帰らぬと想ったひと、想い、信じられないことに目の前に、届くところに今在るから。家康は微笑んだ。
「……半兵衛殿とも、もう一度見たかったものだ」
 それをもたらしてくれた、今はもうこの世に居ないひとに。
 心から感謝しつつ零された家康の言葉に、三成もまた感慨深く暫し瞳を伏せていたが――
「今度、半兵衛様の墓に参れるのはいつになるだろう」
 急に、突拍子もなく己が胸の内を話し出すのは彼のクセだった。
「前田・足利に雑賀、奥州伊達とも睨み合い故そうそう動くことも出来ないが……半兵衛様の好きな桜を傍に植えて差し上げたい」
 あの頃のように。彼が「木漏れ陽のような」と詠う日々の頃と同じような、幼ささえ残るやわらかい表情で、家康の山吹色の瞳を捕らえながら続けた。
「御遺志であった故、佐和山のあの丘に墓標を建てたが……実質、私は左腕として秀吉様のお傍に居らねばならん、なかなか参られないのが……やはり大坂の近くに来て頂いたほうが……」
 甲冑も外し、布しか纏わないひとが――露わになる首筋が、鎖骨が、喋るたびに美しい影を作り出すのを。そして、その瞳にもう――己への怒りが無いことに。
 ふいに胸が詰まって顔を背け――鼻を掻く家康に。不思議そうに――白く長い蛇のようなうなじを伸ばしながら。「いえやす?」と三成が覗き込んでくるので。
 慌てて家康は
「――いや、あそこでいいだろう」
 と答えた。
「……あそこ、で……佐和山で……」
「ああ。半兵衛殿は死してなお、お前を見守りたかったに違いない」
「――何?」
「……豊臣による創世が果たされたならば、やがてお前はあそこに帰るだろう。だから……」
 半兵衛殿は、と。
 家康の云うことに、三成は想わず息を止めて――それから。深くうつむき、胸元の沈丁花をぱさり。力無く地面に落としたので、「みつ、なり?」と家康が問えば。
「…………半兵衛様に逢いたい」
 まるで幼子が遠慮がちに、我儘を云うように。
 三成は誰にでもなく、今も未だ忘れ得ぬ、いや、たとえ天が、星が“否”と云おうとも――決して途切れはしない、己を育ててくれたひととの繫がりに向かい、請うように。続けた。
「愚かだと分かっている。でも、それでも。もう一度あの御方の声が聴きたい。叱って欲しい、“減点、壱”だと。撫でて欲しい。この痛む背を。もう一度、もう一度……」
「――三成」
「逢いたい」
 星の瞬きが始まり出した夜空に向かい、三成はうなじを長く伸ばしながら。大きな瞳を見開き、天蓋の菫色の星を見詰めながら、続けた。
「はんべえさま、佐吉は、まだ、まだ……」
 己の幼名(おさなな)を口にして、三成は大きな苔色の瞳からほろほろと泪を零しながらまるで、迷子のように。
「まだ、きっと、貴方の導きが必要なのに」
「みつなり」
 彼の名を呼びながら、家康は静かに細く冷たい身を抱き寄せた。
 其の、月のように煌く銀糸にくちづけた。
「半兵衛殿は、お前になんと云ったのだったっけ?」
 ゆらり、ゆらり。
 まるで赤ん坊をあやすように三成を抱えて揺らしながら、太陽の権現は優しく問うた。
「……だいじょうぶ……きっと、なにもかも、うまくいく……」
 彼に抱きかかえられながら。
 彼の太いうなじにくちびるを寄せながら。
 三成が想い出を辿り答えた。
「だろ?」
 家康はその答えにまた、微笑んで。
「大丈夫。ワシももう、迷わない。おめぇとならきっと成せるって信じてっから」
 急に幼い、まだ出逢ったばかりの頃と変わらない口調で、己をぎう、と抱き締めてきて、彼は優しく背を擦ってくれるから。もういないひとの代わりに。

 まるで花が綻ぶように。
 豊臣の白き凶刃、とまで謳われる若武者が。
 ほろり、透明な泪をひとすじ零しながら、笑んだ。

 柔らかに、それはどこまでもやわらかに。
 心許した、だけではなく、それはきっと、目の前の――太陽の権現に月の化身のようなそのひとたちは。
 だから、胸にきりりと走った痛みに、左近はもう息も出来なくて。

 ほろほろと泪を零しながら、彼は己の頭を静かに向かい合う彼の肩に預けて。影はひとつに溶け合って、それは、あまりにも美しい一枚の絵のようで。決して、誰にも引き離せない、それが“運命”と云う名の旋盤だったとしても――そのくらいに、ふたりはまるでひとつの絵物語のようで。
 だから、本当に腹が立ってしまった。
 あれ程に「赦さない」と呪い叫んだ日々が嘘のようにするひとに。
 自分には決して見せない幼子のような表情を――東照権現には晒す月の様に。
 腹が立って、悔しくて。
 そこに刑部の言葉が思い出されてトドメのように己が胸に刺さったので、左近は今、独り街道を馬に乗ってとぼとぼと。無意識に自分が酷く悔しそうな表情(かお)をしているであろうことに気付き、ついでにもう陽が落ちそうになっていることにも気付いて慌てて馬を止めた。
「やっべ……今夜どうすっかな……」
 慌てて周りを見やると、山の入り口に寺への階段を見つけ「お」と左近は安堵した。
 大坂城下町から離れてはいるもの、まだ此処は“太閤のお膝元”だろう。旅の者だと少しばかり志を渡せば、寝る場所くらいは与えてくれる筈だ、と。
「ちょっとしんどいかもだけど、ここ登ってくれな」
 と、愛馬から下りて、その鼻面をぱん、と叩いた。



 寺の和尚は左近からの寄進に丁寧に頭を垂れて手を合わせてくれ、温かい夕餉まで用意してくれたので。
 やっぱ、豊臣パねぇや。
 と、改めて太閤秀吉がこの地方にもたらした繁栄を噛み締めた。
 用意された客人用の寝間で、天上を見上げながら想うことは。

「俺だって……逢いたい、んですけど」

 いつでも鮮やかに想える。
 くっきりとした二重の伏せ目がちな横顔、少し動いただけでさらさらと鳴る黒絹の蒼い髪。
 細い体躯も鮮やかな逆刃薙の翠の光の軌跡も。
 何よりも。
 風のように清かな声音を。
 其れが己の名を呼ぶ度に、高鳴ることを。

「さこん」

 最後の逢瀬の時の儚げな表情を。
 呼ぶ声を。

「――往くよ」

 逢いに、往くよ。
 
 無意識に天上に向かい手を伸ばしながら、遠い人を想いながら左近は呟いた。




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ゆみのや

Author:ゆみのや
戦国BASARA3の石田三成にぞっこん一目惚れいたし
こっそり応援し隊所存にございます。

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