BASARAの石田を幸せにし隊。

戦国BASARA3の石田三成をひたすらに応援するこっそり避難ブログ

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積みて恋ふらく Ⅳ

お待たせいたしま…し、た??
今回ちょっと遅くなってすいません、

ドマイナーをつpp(ry

…えーと、今回は『永禄の変』BSRアレンジVer.でお送りいたしております。
軍事クーデターですな。
かなりきつめの暴力・流血・殺人表現が含まれておりますので、
苦手な方はほんと、今回だけでもスルーでも…!
あらすじてきにはだいじょう…ぶ、多分
申し訳ない…orz
でも、このくらい描かないと薄っぺらになっちゃうので…
なんというか、松永主役なのでオトナな噺にはしたかったん、みたいな…
R-15!!R-15ですぞ!!!

今回三好三兄弟の戦闘シーンが楽しかったです。
何度も『街道黎明戦』いって三人の動きを見て考えました…
危うくシリアスがどっかいきそうだったが、そんなことはなかった、
と思います。。。

次回で最終回にしたい!
宜しくお願い致します!

拍手、本当にありがとうございます…!!


目立たぬように作られた、御所から――都から離れた小高い丘陵に沿った本陣に、松永は多聞山城を模ったかのような白磁と漆黒、其処に見事に波打つ金色を配した陣羽織を纏って、三好三人衆の前に馳せ参じた。
其の出で立ちの色合いに、同じく兜甲冑と陣羽織に身を包んだ長逸が思わずほう、と吐息を零して顎を上げた。
「まるで、多聞山城の如き色彩」
長逸の言葉に、松永は戦場に似合わぬ柔らかな笑みを一瞬浮かべた。
「解ってくださるか。白に黒、どちらも“死への覚悟”を思わす装束の色。其処に金色を配せば、このまま討ち死にしても立派な死装束と成って呉れよう、と云う想いを込めておりますれば」
松永の答えに、長逸が鬼を模ったものものしい兜の下で、苦く笑った。
「弾正殿らしくない」
死なれては困る。
青年の苦い言葉に、松永も微かに笑みながら頷いた。
「左様。此処で討死する気は微塵も無い」
そして松永は長逸の肩に手を置いて、「参りましょう」と霧雨の中、京を見下ろす高台に密かに配された布陣を満足そうに見下ろした。


雨の中、それでも陽は落ちてほの暗くなっていく空の下。
使者と身を偽って御所に潜んでいる先遣隊からの合図を息を殺して待っている本隊に向って、松永弾正久秀と三好三人衆は、初めて大きな声音で宣言した。
「今こそ、御屋形様の無念を晴らす時」
まるで己が陣大将かのような云い様に、背後に佇む政康の瞳が苦く歪んだが。長逸は静かに頷いて、松永に続きを促した。
「聞け。此処に集いし三好の忠臣達よ。亡き御屋形様――三好長慶様をいいように操り、何の恩恵も与えず京に居座る、形だけの公方などもう要らぬ。今こそ、我ら三好勢が天下の覇権を手にするのだ…!」
そして松永は、三好の家紋、三階菱に五つ釘抜を豪奢な陣羽織に縫いこんだ長逸を促して、控える家臣達に向わせた。
「松永弾正の云うとうりぞ。傀儡の公方なぞ、もう要らぬ。此の場に、我ら三好三人衆に異を唱える者は今名乗りでよ。我らは、今、将軍、足利義輝を討ち――御屋形様の無念を晴らす!!」
若く美しい凛とした三好の長兄の宣言に、誰もが酔ったかのようにおおおお、と鬨の声を上げた。
「勇猛果敢なる三好のもののふ達よ、必ずや、公方の首を御屋形様――長慶様への手向けとして獲って参れ!!」
長逸の宣言と共に、陽が堕ちた霧雨の闇の中――事は起こった。突如として、法螺貝に
馬の嘶きが響き渡り、笠と、雨を凌ぐため、と羽織っていた蓑の下から――御伺いを立てる使者を装い、密かに二条御所内に送り込まれた先遣隊が――物々しい鎧具足一式を露わにした三好の切り込み隊が、鬨の声を上げて御所の正門を守る番兵らをあっという間もなく斬り伏せ門を開け放ち、合図のように四方八方から壮麗な屋形の中へと矢が放たれた。
「素破ッ、謀叛なりッッ!!」
奥の間で、何時もの様に上臈女房らを侍らせ酒宴に耽る将軍のもとに、其の報せは遅過ぎて届けられた。
「み、三好勢と松永弾正の謀りに御座います!既に、八方取り囲まれておりますれば!!」
震える小姓の報せに、塚原卜伝から“一ノ太刀”を免許皆伝されし剣豪将軍・義輝は――「おのれ、三好――そして松永弾正ッッ!!」と叫んだ。
「松永…三好を操るだけに満足せず、此の首級を欲するか」
まこと、欲深き悪霊ぞ。
「是非もない!」
そう叫ぶと、「具足持ていッッ!!そして刀を!!有るだけの刀をこれへ!!」
齢三十に成る男盛りである将軍は、最早――と宿命(さだめ)を悟り、
「塚原“一ノ太刀”、三好の者共一人残らずに味わわせて、地獄へ陥として呉れようぞ!!」
と、筋骨逞しい肩をいからせ、獣のように怒りの咆哮を。
其の気勢に、傍に控えていた屋形侍たちも狩衣や直垂のまま、各々襷をかけて「公方様をお守りするのじゃ!!」「雨の闇夜に乗じての謀叛…下衆共めが!!」と、たちまち障子襖の類は押し倒されて。控える女房達が真っ青になるのを見とめると、輝義は
「そちらは落ちのびよ。たれか!」
と傍使えの信頼のある家来らを促して、女達を引き下がらせた。
小姓らが震えながら必死で己が身に、甲冑を纏わせる束の間。ふいに彼の脳裏に――琥珀色の不敵な眼差しを、己に向けていた老獪の――三好家を此処まで衝きたてたのだろう、男の不敵な笑みが思い出された。忌々しい、肚の底の知れぬ梟のような男であったな、と。ふ、と義輝が苦く笑うのを、小姓たちがいぶしかんで顔を見合わせた。
「…まったく、今の今まで…先に三好の腹を喰い破るか、と思っておったのじゃがのう」
クク、と。義輝の自嘲に、傍仕えの治部三郎左衛門藤通が悔しそうに、だが覚悟を決めて主に応えた。
「上様、かくなるうえは最後の一兵まで地獄へ道連れにして、足利侍の意地を見せてくれましょうぞ」
彼の言葉にうむ、と満足して頷くと。義輝はヂヂッと揺れた蝋燭の焔の中に――あの男の瞳の色を見た気がした。
そう。梟雄よ、貴様が仕掛けてきのならば受けた立つまで、と。
「貴様の思うように成るとは思うなよ…!!」
と、足利義輝は闘志に満ちた眼差しで、近付いてくるけたたましい鎧具足のかち鳴る音、もののふたちの鬨の声、雅やかな御所に相応しくない剣戟の音に仁王立ちと成り、持ってこさせた刀を片っ端から鞘から引き抜くと、まるで鋼の盾のように己の周りに突き刺した。

先に“使者”を装って御所内に潜んでいた三好が重臣、林久太夫が息を切らして本陣へ舞い戻り「整いまして御座る!先遣隊、出撃ったッッ!!」と叫んだ時。
松永は今までに長逸に決して見せることのなかった残忍な笑みを口元に浮かべ、嬉々として宣言した。
「御所に火を放て!!ゆけ、きゃつが抱する宝、女、好きなように奪ってしまえ!!踏み躙れ――今まで我らを狗(いぬ)程度にしか思わなかった愚かな傀儡将軍を!!」
松永の宣言に、待ち望んだかのように控える本陣の松永軍、三好連合軍のつわものらが凶暴に雄叫びを上げた時、長逸は眼を見開いて横に立つ松永を見上げた。
「弾正殿!?なんという――」
幼い三好家宗主の戸惑いなど意に介せぬように。松永は彼を見やって。
「奪えばいいのだ。好きな様にな。これぞ“人”の本懐。放ってやることで、彼らは本性のままに――」
松永の答えに、長逸は信じられない、というように眼を見開いて、雄叫びを上げて御所へ雪崩れ込む己が軍勢に声を張り上げた。
「女たちには手を出すな!!宝も無下に奪っては成らぬ、我らは奸族ではない、ただ御屋形様の――」
だが、戦の高揚に包まれたものどもに、既に長逸の言葉は届かず。
彼らは凶暴に叫びを揚げながら、火矢を放ち宝物や美しい姫、女房らを踏み躙り――二条御所はあっという間に松永の思惑どうり、乱れた。
「…弾正殿…ッッ!!」
長逸が兜の下から慄きに見開かれる眼で横に――あの日、己を掻き抱いたひとを捉えた。
「これでは、これではただ、我ら三好は――」
「此の期に及んで何を」
長逸の責めを、松永は一笑に伏した。
「我らは既に逆賊ですぞ」
松永から告げられた冷たい真実に――長逸の、未だ幼さを残した中性的な白い面が凍りついた。すると長逸の後ろに控えていた弟達が兄の代わりに
「何を云うッ弾正ッッ!」
「わきまえよ、幾ら貴殿でも我らが長兄に向って――」
と、松永に向って叫んだが。松永はふ、と虚しく笑んでみせながら――答えた。
「幼い頃より名家の御曹司として育てられた卿らには、この行為は“御家を守る為の義にかなった戦”としか思われぬかもな。だが、“あちら”からしたらこちらが阿波国宗家・三好であろうが、それこそ尾張のおおうつけ、織田であろうが――同じこと。宝を、土地を、名誉を、命を――力に任せて奪いに来た逆賊、とな」
何の感慨も無く――男は淡々と云ってのけた。今までもそうしてきたのだ、と。伏せられた深い瞳に、底知れぬ闇を潜ませて。
「長逸殿――どうせ奪うのならば、すべてを。見よ、つわものらのなんと生き生きとしたことか」
クク、と喉仏を震わす松永の横で、長逸は見た。
かつて己の母が暮らした京に無残に火が放たれ――悲鳴が。悲鳴が、彼の耳に届いた。
将軍を護るつわものでなく、女たちや小供らの悲鳴が。
嗚呼、とくちびるを震わせた後――「…なんということを…ッッ…!!」と、長逸はきつく瞳を戦慄かせて。
「弾正、俺は此処までの地獄は望んでおらぬ!!」
と叫び。
「――政康、友通、俺と共に来いッッ!!」
長逸は傍仕えの者らが戸惑う中を突っ切り、己が葦毛の愛馬に飛び乗りながら、ガッと勢いよく馬の腹を蹴り、背に負っていた恐ろしく長い大太刀を抜き放った。
「「兄者ッッ!!」」
と、ふたりの弟も己が愛馬に跨って、直ぐに其の後を追った。
何も知らぬ民らが焔に巻かれ逃げ惑う中、京の整えられた道筋を荒く駆けながら。三好三人衆は風のように、立ち向かってくる将軍家の家来らを切り伏せながら――足利義輝の奮戦する二条御所へと必死に駆けた。

せめて、せめて。
将軍が御正室だけは。近衛家の姫だけでも。

若武者は必死で愛馬を走らせ、逃げ惑う民を轢かぬよう時々足止めされながらも、見止めることが出来た三好の家臣らに「我ら三人衆が直々に往く、雑兵共に盗人染みた愚かな行為はさせるな!」と必死で叫んだが。
辿り着いた御所へ踏み入って馬を降りてみれば、目に入ったのは――美しい単を引き裂かれ、男共に襲われている姫や侍女達であったことが、一瞬長逸の気を遠くして、足をふらつかせた。
そして次の瞬間、長逸は大太刀をひらめかせて「何をしておる、貴様らッッ!!」と斬りかかろうとしたので――
「――兄者ッ!」
がばっと、双弟の政康が、怒りにこめかみを引き攣らせる双兄を必死で押し止めた。
その横から見兼ねて身を進めた末弟の友通が「その女らを放せぃッッ!!」と、足軽らを怒鳴りつけて「女を襲っている暇があるならさっさと奥へ攻め入らぬかッッ!!我らが希むは公方の首のみぞ!!」と味方さえ斬り伏せそうな剣幕でせまったので、足軽らは縮み上がったあと慌てて武器を取り直すと、渋々と御所の奥へと踏み入っていった。
残された女達は、呆然と泣き伏せるばかり。
政康が静かに彼女らに手を差し伸べても、逆に彼女らは悲鳴を上げて後退さったので――政康は無駄かも知れぬ、とは思いつつも「早く逃げろ」とだけ呟いて、長逸に向き直った。
「兄者…」
兜の下から覗く双弟の苦々しく歪められた瞳に、長逸はやっと悟った。
これは戦などではない。そう、そうだったのだ、と。
亡き先代宗主の無念を晴らす、などと体のいい言葉で飾ってみても――今、自分達が成そうとしていることは――
どうして、気付かなかった?
初めて、青年の心に否応の無いどす黒い感情が渦巻いた。
浮かされたのか。
あの男の甘言に。俺は――
「…最早こうなれば…全てを焼き尽くすまで」
震える長兄の言葉に、弟達の瞳が見開かれた。
「もういい、好きなようにさせるがいい。どうせ、すべて焔に焼かれる」
そして一瞬だけ、長逸は本陣に居るであろう男を振り返った。
貴方の思惑どうりになったな、と。
満足か、梟雄。
ぎりり、と。容のよい唇から血が滲み、鉄の味が感じられた。
いいだろう。
「…所詮、“人”の欲の成すところであった…」
嗚咽のように絞られた長逸の言葉に、弟たちも初めて――悟った。
御家の為、とは。所詮、飾り物の言葉に過ぎなかったのだと。
「あに、じゃ…」
友通の呼びかけに、長逸が振り向いた瞬間だった。
「――見ろッッ!!あの家紋…出で立ち、三好三人衆ではないか!?」
「おのれッッ逆賊ッッ!!」
「囲みこめ、せめてきゃつらの首を公方様のため冥途へ送ろうぞ!!」
気付けば、足利家の重臣と見受けられし勇ましい侍たちが、長逸らをじりり、と取り囲んでいた。
ちゃきり。
長逸の両手に構えられた恐ろしく長い大太刀が渦巻く焔を反射させて光った。そして、弟達の構える槍もまた。
「…そうだな」
長逸はふ、と渇いた笑みを零しながら――空を一瞬だけ仰いだ。
黒煙に巻かれ、雨空でありながら煌々と照らし出される京の夜を。
「所詮、どちらも同じよ」

そうであろう?弾正殿――

「我が名は三好孫四郎長逸ッッ!!三好三人衆が筆頭よ!!足利義輝の御首級を奪いに参った!!亡き三好長慶様の御威光を踏み躙りし愚かなる者共よ、貴様らにせめてもののふの心意気有るならば、一太刀でも我が身に浴びせて見せよッッ!!!」
長兄の雄叫びを合図に。
弟達も瞳に凶暴な光を宿して――ザンッと敵方に向って踏み込んで、あっという間もなく最初の壁を斬り伏せてみせたので、屈みこんだ政康の背をたん…っと踏んで跳躍すると――重い具足を纏っているとはとても思えぬ軽やかさで、長逸は空中から舞うように、残りの者たちの首を刎ねた。
一瞬にして屍の山を築いた兄弟は、黙ってお互いに頷くと、益々焔の手が強くなる御所の奥へと風のように走り出した。


途中、足利義輝の腹心ら細川宮内少輔隆是らが将軍の座する間へ、これ以上は何人足りとも通さぬと鬼のような形相で煤に塗れながら奮戦する場に出くわすと。
「退け、我らに任せよ」
「な…ッ、長逸様!?」
本陣で指揮を取っている筈の若き宗主の返り血に塗れた姿に、足軽頭が眼を見開いて彼を見上げた。
じりじりと後退さる味方を背にして、三好三人衆は静かに――ちゃきり、と獲物を鳴らして酷く冷たい眼差しを、将軍の最後の壁に向って投げかけた。
「退け…と、云って退くような者が、今更此処に居るワケはないな」
クク、と。
向って左側に立つ――次兄・政康から零された冷酷な笑みに。
剣豪将軍に仕えるに相応しいもののふたちの顔が、恐怖で引き攣った。
ちゃき、ちゃき、と。
長逸が大太刀の先を床に数度つけてまるで、舞の拍子をとるかのように、鳴らして見せれば。後に続く弟二人も、同じように槍の穂先を鳴らして見せた。
「せめて、主に恥じぬ最期を遂げるがいい…!」
長逸の宣告と同時に、一斉に両者は動いた。
相手の縦に一閃する太刀をひらり。
宙を一回転しながら長逸がかわせば、空振りに身を余らせた相手の身体を、弟たちの二本の槍が貫いて。政康が串刺しにした相手を足蹴にして槍から引き抜き、後ろに控える連中に蹴り返した。
其の上から、ふわりと長逸が陣羽織の裾をひらめかせながら大太刀をザン…ッと薙いで見せれば、あっという間に数人の屍が築かれて、残った者たちは声さえ出せずに凍りついた。
静かに床に降り立った長逸が屈みこんだ勢いで一人の敵に真っ直ぐに大太刀を――其の肚に貫いてみせれば、政康と友通が兄の肩を足で蹴って宙に舞い、まるで鏡合わせのように正反対の方向へそれぞれ槍を振るい、残った者たちの身体を斬り裂いて。
おおお、と控える三好の兵らが感嘆の声音を零した頃には、将軍を守るために最期まで立ち塞がった主たるつわものたちは、無残な骸となって御所の磨き上げられた床に夥しい紅い血潮を流して散っていた。
「――公方は、此の先か」
ぶん、と大太刀を振って敵の血を払った長逸の元に、慌てて指揮を担っていた篠原長房が膝をつき、声を張り上げて告げた。
「はっ!!奥の間にて、所蔵の名刀を床にあらん限り突き刺し、とっかえひっかえ鬼が如くの荒ぶりよう――何度も息を合わせて討ちかかるも――」
「――解った、もうよい」
長逸の酷く冷めた答えに、篠原長房が困惑した眼で若き宗主を見上げた。
「後は我ら、三好三人衆が片付ける。して長房、ひとつ…どうしても頼まれては呉れぬか」
長逸の静かな声に、篠原長房は改めて
「はっ!なんなりと!!」
がしゃり、甲冑を鳴らして若き主に頭を垂れた。
「…将軍が御正室は近衛家の姫だと聞いている。こんな混乱の最中ではあるが、なんとしても助け出して差し上げられぬだろうか」
ふいに、いつも城で上質の直垂に身を包み――虫一匹殺さぬような――母によく似た面で、語っている時のような。あまりに静かな、だが低い押し殺した声音で。彼が何かを云う時、其れは心からの願いを伝える時に他ならない。
そうか、長逸様と政康様の御生母は――
「――御意に、御座います…必ずや将軍が御正室、助け出してご覧にみせまする!!」
篠原の力強い宣言に、長逸は「うむ。頼りにしておる」と、微かに笑んでさえみせたので。篠原は「…殿…御武運を!!」と、焔が強くなる中、踵を返して慌しく駆け出して行った。
彼と彼に従う足軽たちの背が回廊を曲がって見えなくなると、長逸は静かに二人の弟の方を振り返り告げた。
「……すまん」
兄の言葉に静かにかむりを横に振ると、政康が答えた。
「いいさ。戦なんて、いつだってこんなモンだったろう?」
「兄者、此の期に及んで情けは無用だ」
続けられた友通の言葉に、長逸は――そうだ、いつだって、何処でだってこの弟達は、自分の背を守ってくれていたのだと、ふいに嬉しくなって場違いに微笑んだ。
「そうだな」
そしてひとつ頷くと、ぶん、と。大太刀を振り焔の中、悲鳴と怒号が聞こえる――将軍・義輝が居る正殿へと踏み入ったのだった。


「――ぎゃぁああッッ!!!」
手柄を上げんと先走った足軽を、軽々と“一ノ太刀”にて其の頭をかち割って、「次は誰じゃ!!」と、剣豪将軍・義輝が叫んだ時。
豪奢な猩々緋をもとにした陣羽織と鬼を模った兜を揃いにした、三人の若武者が静々と――まるで能役者の如く武器を鳴らしながら踏み入ってきたのを、義輝は見とめた。
「貴様らは…」
将軍の問いに、抑揚のない冷たい声音で、先頭の若武者が答えた。
「我が名は三好孫四郎長逸」
「三好右衛門政康」
「岩成主税助友通」
「亡き御屋形様の無念を継ぎ、今此処に馳せ参じし」
「「「我ら、三好三人衆」」」
其の名乗りに、義輝の頬が苦く歪んだ。
「はっ、あの御人好しの三好の跡目か」
ぶん、と血と脂に塗れなまくらとなった刀を捨てると、義輝は床に突き刺していた次の刀に手をかけながら。
「よくもまあ、恥知らずが。あの松永弾正にたぶらかされたか?いけすかぬ奴よ、何処の生まれとも解らぬ下賎のクセに、いつの間にか我が京を…そして、三好を好きなように蝕んでおる」
貴様はソレでいいのか。
将軍の思いがけぬ問いに、一瞬、長逸の頬が強張った。
「見たところ、齢二十歳にも見たぬ小僧のようだな。フン、あの弾正の口車に乗せられ此処まで来たのか?」
「否!!」
義輝の挑発するかのような問いに、長逸が地を這うような声音で答えた。
「我らは我らの意思で、今此処に馳せ参じた!!」
「いいだろう、だが我を葬ったところで三好の天下なぞ三日続くかどうかよ。小僧、因果応報と云う言葉を識っておるか?支えるべき主家に逆らい滅したなら…いつか貴様らも――」
焔で照り返される血に塗れた、頬骨の高い顔立ちを歪ませて続ける将軍に向かい、政康が兄の代わりに一歩進み出て低い声音で答えた。
「黙れ。ならば今、御所がこのように焔に巻かれている有様こそ因果応報だ。貴様が我ら三好にしてきた仕打ちの、な」
「そうだ」
続いて、友通が。
「最早此れまでだ。貴様の首を貰い受ける。我ら三好三人衆が、な」
「――そう」
そして長逸が蒼白い顔を上げて――立ち塞がる将軍に、最後の宣告を。
「焼くか焼かれるか、がこの乱世。ならば…俺は…ッッ!!」
ダンッッと。
味方の屍の山を踏み拉いて、長逸が大太刀を振りかざし最初の一太刀を横凪に。
「――うぉッ!!」
義輝が辛うじて其れを防いだ頭上から――兄の背を足で駆け上がって、二人の弟がザンッ!!と高く跳躍し、槍の穂先を将軍に向けて衝き下ろしたが、ソレは虚しく床に刺さって、義輝は力強い一太刀を政康と友通に向って払ってみせた。
「――ぐぁああッ!!?」
己の横を転がっていく弟たちを見やりながら「政康ッ友通ッ!!」と長逸が目を逸らした瞬間を逃さずに、義輝が“一ノ太刀”を長逸に振り下ろしたが、ガキイイッ!!と鋼と鋼のかちあう火花が散って、長逸が防御の為に構えた大太刀と、義輝の刀がギリギリと音を立てた。
「死ねぃ、愚かな三好の田舎侍めがッッ!!!」
義輝の其の叫びが――長逸の瞳に焔を宿させた。
「――ふざけるなッッ!!」
ガキィインッッ!!と将軍の太刀と身体を弾き飛ばしながら、長逸が震える声音で叫んだ。
「その田舎侍に頼らねば…生きてゆけぬ傀儡が!!貴様、誰のお陰でこのような御殿で今まで酒に女に耽って居られたと思っている!!?」
そして長逸が大太刀を振って構えなおしたのを合図に、三人の兄弟は三角形を描くように義輝を取り囲んだ。
「…こんな…傲慢な男のタメに…!!…」
長逸がじりり、と太刀を構えながら歯を食い縛った。
「どれだけの無力な者が、こんな、こんな――」
次の瞬間。
うおおお、と大太刀を振りかざして斬り込んだ長逸の一手を必死で防いだ義輝がよろめけば、押し返された長逸は大太刀の上に静かに降り立った政康の身体を――放り投げた。太刀を、櫂のように振り回しながら。
まるで鉄砲弾のように槍を真っ直ぐに飛んでくる政康の一撃を避けられず、剣豪将軍はとうとう――その肚に深い刃を喰らって。
「……な……ッッ」
かっ、と血反吐を吐いて天を仰いだ将軍の肚から槍を引き抜くと、たんっと床を蹴って政康は宙を舞い今一度間合いを取った。
「――今だ、兄者ッッ!!」
弟の叫びを合図に、三人は三方から一斉に獲物を将軍の――肚に、身体に衝き立てた。
「……が……ッッ…」
そして三つの刃が引き抜かれた時、将軍の身体からぶしゃああ、と勢いよく血潮が飛び散ったので。長逸が崩れ陥ちる者の首に、最期の一太刀を横に振るえば。
呆気なく。
将軍の首が――飛んだ。
胴体から離れて、鬼のような無念の形相を模ったまま。
どんっ、と重い人の首が落ちる音が焔に巻かれる二条御所に響いた後も――女小供の泣声と悲鳴、つわものらの怒号は止むことなく。
「…父者…母者…御屋形、様…」
最後の力を振り絞って公方の首級を獲ると、長逸は「これでいい」と、誰にもなく呟いた。
これでいい。と。
たとえ間違っていたのだとしても。
きっと、俺がこうしなくとも――
そして瞼の裏にあの人の笑む顔が横切った。
「兄者、往こう。ここも直ぐに焔に巻かれる」
低く云いながら己の肩に労るように手を添える双弟に向かい、汗と血に塗れた白い面を歪ませながら、長逸は頷いて将軍の首級を脇に抱えて踵を返した。
バチバチと焔が木を、人を、焼く音を聴きながら。黒煙巻く中を。
終わった、と。
喩えようのない虚無感に負けぬよう、力強く歩みながら。



焔に巻かれる京を背に、公方の首級を下げて歩んでくる長逸を――微笑みながら、松永は出迎えた。
「そうすると、想っていたよ」
松永の言葉に、ふいに。
長逸の血の匂いに染まった意識が――清浄に明るくなった。
次に投げかける言葉は責めか呪いになろうや、とさえ憎く想ったのに。つい数刻前のこと。顔を見た途端、真逆の想いが心を占めたので。長逸の歩みが、息が止まって目の前の男を見詰めた。
松永はそんな長逸の胸中を知って知らずか、宝剣を鞘に収めると、南蛮風の白い手袋に包まれた右手を当たり前のように――彼へと差し伸べた。
「卿ならそうするだろうと。解っていたよ」
長逸殿。
低く、擦れた艶の有る声音。
あの日、雨に囲まれた茶室で聴いたのと変わりない。
其の瞬間、長逸の手から公方の首がごろり、と落ちて彼の身体もまた、崩れ落ちた。
「――兄者ッッ!?」
慌てて政康が手を伸ばしたが、それよりも先に。彼を抱き留めたのは、松永弾正であった。
なんとも云えぬ妖しい琥珀色の光を瞳に宿しながら、恭しく若き宗主を抱き留めて。重い兜をそっと外して地面に落とすと、零れ落ちた黒髪をいとおしく撫でて――感じ入るように松永は「…今は、眠れ」と。彼だけに聴こえる様に囁いた後。
「――弾正、兄者を――」
返せ、と詰め寄ってきた政康に鋭い一瞥を投げかけて、松永は長逸の身を抱きかかえて「長逸殿は手負いであられる。気付かなかったのか?」
と。
其の時、ようやく政康と友通も気付いた。
甲冑の下から伝って腿を覆う布から――兄の血が黒く滴りつつあることに。
「――兄者!!?」
どうして、いつ――
真っ青になって双兄に歩み寄ろうとした政康を、松永弾正が鋭い眼で制した。
「下手に動かしてはなりませぬ」
そして顎で家来を動かし公方の首級を拾わせると、松永はすく、と長逸を横抱きにして低く言い放った。
「後は私にお任せを。長逸殿の手当てを致す。卿らには残る軍勢の指揮を御頼み申す」
政康の返答を待たず、踵を返して去る松永の背を――止めることが出来ない己に、政康はクッ、と喉を鳴らしながら――思わずにはいられなかった。
どうして。どうして届かない。これではまるで――
「あに、じゃ……」
絞るように瞳を歪ませる次兄に寄り添いながら、友通もまた、思わずには居られなかった。
今夜の凶行も。兄のあの様も。
すべてがまるで、あの男が仕組んだとうりではないのか、と――

やうやうと朱往く曙の元、ようやく雨雲の去った京は無残に焼け焦げた醜態を、足利滅亡の証のように晒して見せていた――









混濁した意識の中で、ふいに鼻に覚えの有る黄熟香が芳ったので。
重い瞼を開けてみれば、其の人は一瞬――ほ、と。精悍な頬を緩ませて、安堵したかのように息を吐いてから、いつものように笑んで呉れたから。
青年もまた、先程までの血生臭い所業が嘘のように、早乙女のように笑んで魅せた。
すると青年を抱えるひとも、いと惜しい、と顔に浮かべたような甘い笑みで応えて。
「何も案じられるな」
と。
低く謳うような声音で、しかと彼の身体を抱き締めながら耳元に囁いた。
「万事、うまくいった」
長逸殿。
其の答えに長逸も「ふ」と擦れた声音で応えて、微笑み返し――今度は安堵と共に暗い眠りに落ちていった。
もういい。終わった、と。
このひとが居てくれるなら、と。





だが、長逸の意識が再び闇から浮かび上がるように戻った時――
其処に、もうあの黄熟香の芳香はなく。
代わりに、耳に慌しい足音と、小姓らのひそひそとした呟きがあって。
「聞いたか?」「弾正殿は一体どういうおつもりか」「織田がすぐそこまで迫っているのに――」
もそり、と傷ついた身体を起こせば、肚に鈍い痛みが走った。
だが、長逸は「…どうしたこと」と、低く――何事もなかったように枕元に控える小姓らに問うたので。
小姓らは飛び上がるほど驚いて、慌てて「な、長逸様!」「殿がお目覚めになられた!!」と騒ぎ出した。
「……此処は」
「殿!此処は殿の居城、飯岡城で御座いまする!」
小姓の一人が長逸の肩を支えながら、よう御座いました、と安堵の笑みを零したが。長逸の次の言葉に彼は顔を凍らせた。
「…だ、んじょう、殿、は?」
其の問いに――小姓の顔が暗く沈み、言葉を詰まらせたことに、長逸の意識がはっきりとしていった。
「どうした。松永弾正殿は、今何処に」
「そ、れが…」
躊躇う小姓と長逸の向こう側から――「松永からの返答に御座るッッ!!」と。
ばたばたと家臣らが駆けて行く音が聴こえたので。
長逸がうめきながら身体を起こして床から出ようとするのを見て、「長逸様!ま、まだ横になっておられたほうが」と小姓が制したが、長逸は彼の言葉など耳に届いていないかのように、城の上段の間へと足を引き摺りながら歩を進めた。




「――京の統治を、己に全権寄越せだと!?」
政康が青筋を立てて、松永からの書状を畳みに投げつけた。
「ふざけるな!!京を獲ったからといって、将軍にでも成ったつもりかッッ!!」
上段の間に集った家臣らを前に、三好三人衆が次兄は怒りを露わにしてわなわなと肩を震わせた。
「政康様、このままでは」「織田信長は既に比叡山を焼き討ち、擁していた足利が傍流、義昭も、我らが義輝を討ったと知った途端、首を刎ねたのだとか」「公方討ち以来、多聞山城に籠もり頑として動かぬとは――」
家臣らの問いに「分かっているッ!!」と政康の怒号が響き、末弟の友通が思わず「兄者」と政康を制した。
「クソ…ッ、こうするだろうと思っていたさ…“裏切り弾正”…!!」
苛々と顎を掴みながら、政康は独り言のように続けた。
「あいつは将軍家さえ廃すれば、後はオレたちの事など用無しにしか――」
其処で政康の言葉が急に途切れて、彼が息を止めたのを友通や家臣らが気付いて、凍った視線の先を見やれば。
其処に、傷身の長逸の白い寝間着姿が在ったので。
慌てて皆が頭を垂れる中、長逸はまるで幽霊のように音も無く双弟に歩み寄りながら「……なんだと?政康、一体何が」と。
「…兄者…」
苦しく眼を歪めながら――政康は己と瓜二つの容貌の双兄に歩み寄り、其の肩に両手を置いて。
「…よかった、三日三晩か…目覚めてくれてほんとに…なのに…傷ついた身の兄者に、こんなこと…だが、落ち着いて聞いてくれ。織田信長が。比叡山の本願寺顕如を討ち獲った」
告げられたことに、一瞬、長逸が眉を潜めて小首を傾げた後。「まさか…」と。焦茶の眼を見開いて、双弟に問うた。
「尾張のうつけが、とうとう上洛を始めたのか」
双兄の変わらずに賢しいこと、冷静な言葉に――政康がかえって苦しそうに頷いた。
「ああ。織田信長は天下布武を唱え、既に、擁していた足利義昭も無下に首を刎ねたそうだ。もう、すぐそこまできゃつらは迫っているというのに。松永は公方討伐以来、多聞山城に籠もったきり。そして今…“織田に対する共同戦線を張りたいなら、京の統治を己に全権寄越せ、そうでなければもう三好の為には動かぬ”と、書状で寄越してきた」
双弟の言葉に――長逸は一瞬、鼻先をあの妖しい黄熟香の芳りが横切った気がして。
次にはがくり、傷む肚を抱えて崩れ落ちた。
「兄者ッ!!」「長逸様ッッ!!」
直ぐ其処で響いているはずの、周りの者たちの悲鳴が酷く、酷く遠くに聞こえる中で。長逸はきつく瞳を閉じながら、想った。

嗚呼、貴方は最初からこうするつもりだったのだな、と。
だが――
こんなにもすべてを力尽くで奪い獲ろうとするくせに――何故。
あの日、俺を組し抱かなかったのか?と。
家臣達の怒号を遠くに聞きながら、長逸は熱に浮かされるように、遠く、遠くの――今ならはっきり解る、想っている人に問いかけた。
幾らでも機会はあったろうに。
どうして、俺の命を獲らなかった、無理矢理にでも組し抱いて――殺さなかったのだ、と。


《続》

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ゆみのや

Author:ゆみのや
戦国BASARA3の石田三成にぞっこん一目惚れいたし
こっそり応援し隊所存にございます。

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