BASARAの石田を幸せにし隊。

戦国BASARA3の石田三成をひたすらに応援するこっそり避難ブログ

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文月のころ 【下巻】

お待たせしました、半兵衛と佐吉の親子噺、これにて了。
たった3行で済むエピソードがここまで膨れ上がったので、
自分は骨の髄まで泥土でござらあああ、と再確認したのでありました。

拍手ありがとうございます…!!
心の糧、心の糧でございますッ…!!
夏コミ準備頑張れます。


そうして多忙である豊臣の指揮官に、もうひとつ心割く仕事が増えたわけだが。
半兵衛自身はむしろ、佐吉に接していられることで織田勢との睨み合いで殺がれていた安らぎを取り戻しているような、不思議な感覚をおぼえていた。
佐吉は少しおとなし過ぎるか、と思うところもあったが、半兵衛の云う事をよく聴き、学び、勉学にも武道にも励んだ。
若木が水を吸い上げるように日々成長していく幼子の様子に、半兵衛は「育てる、とはこうも楽しいことだったか」と、目を細めた。
何より、自分と同じような毛色故の孤独を受け入れていた背中が、もうそう見えなくなっていることが喜ばしい。

一日も早く、立派に成って。

そう願いを込めて、午睡する幼子の銀糸を撫でながら、半兵衛は想う。
秀吉の為に。豊臣の為に。
「いつか…」
ずっと早く居なくなる、僕のタメに。
思わずそう呟いた時、半兵衛は、はっと口を覆った。
そうか。自分はこの子に、自分の代わりに彼の傍に居て欲しいと。願っているのだと。
「…そうか…」
フ、と苦く笑った後、半兵衛は心の中で、佐吉に向かい続けた。

そう、いつか、ずっと早く居なくなる僕の代わりに。
豊臣の子として、秀吉のタメに、強くお成り。

と。



文月も終わりに差し掛かり、暑さも日に日に増してきた或る日のこと。
いつもどおり、彼に与える課題の束を抱えた半兵衛が西の丸に入ると、まだ手入れのいっていない庭――というより森が、より緑の濃さを増していることに気付いた。
「やあ、今年は蝉もよく啼くだろうな」
独り言と共に、手を翳して仮面の上の銀髪を掻き揚げる。
「佐吉君がまた、部屋に虫をもちこまなきゃいいけど」
一度大騒ぎになったからなぁ、とくすり、笑いながらその子の部屋へ辿り着いた――時。
「――あれ?佐吉君は?」
涼やかに竹で編まれた格子で整えられた部屋に入った後、半兵衛はくるりと周りを見渡した。途端に、端女たちが部屋のそこかしこで緊張で固まる気配がする。
半兵衛が微かに眉を寄せた。
「君達、佐吉君はどこだい?」
少し低くなった半兵衛の声音に、未だ歳若い侍女が、慌てて半兵衛の下へ駆け寄り畏まる。
「は、はい、半兵衛様。それが…」
そこからぐ、と言葉を詰まらすその様子に、半兵衛が珍しく、険しい声音で問い質した。
「佐吉君はどこか、と聞いているのだよ、僕は」
「も、申し訳御座いません!」
違う侍女が、薄い桃色の着物の裾をたくし上げながら、続けて頭を垂れて慌ててまくし立てた。
「つい先程までは、縁側からお庭を眺めておられたのですが、気づいた時にはお姿が…」
「――なんだって?」
つまり。早い話が――
「先程、とはどのくらいだい?近くの部屋は全部探したんだろうね?」
「は、はい!しかし何処にも見当たらないので御座います」
「…まさか」
御ゆるしを、半兵衛様、という侍女らの言葉を背に、半兵衛が本紫の外套を靡かせて縁側からの景色を仮面の奥の紫苑の瞳からじぃ、と見た。
思考を巡らす。
大坂城は広い。
もし、城の中を迷っているのならそれでいい。きっと誰かが見つけて此処へ連れてくるだろう。
だが――
もしもこの眼前に広がる、西丸殿の広大な敷地へ、庭、というよりは森に近い、未だ手入れされきっていない樹々の中へ、幼いあの子が好奇心に任せて進んでいったのだったとしたら。
「…佐吉君!」
思わず声を張り上げた己に微かに驚きながらも、半兵衛は抑えることが出来なかった。
「君達、そこら辺にいる男手を捉まえて来てくれ。急いでこの庭中を探すんだ。君達は続けて、城の中を!」
「は、はい!」
「いいかい、あの子は秀吉が世話になった石田家の大切な子なんだ。もしものことがあったら…君らは秀吉の顔に泥を塗ることになるんだ」
そして、僕も。
くっ、と吐き捨てるように続けられた言葉に、侍女たちが一斉に顔色を変えた。
只の土豪の末子。他にも幾らか居る子飼い集のうちのひとり。
其の程度に思っていた自分たちの気の緩みが、今、豊臣秀吉の右腕の顔色を変えている。
「も、申し訳御座いません半兵衛様」
「謝らなくていい。今は。兎に角、佐吉君を探すんだ」
そこまで云うと、半兵衛はすた、と具足をさっさと履いて庭の奥に向かってざくざく歩きだした。
「お、お待ちを!あなた達も早く男手に声を――」
「半兵衛様!」
背中に侍女たちの悲鳴を聞きながら、「佐吉君!」ともう一度、美しい声を張り上げてみたが。
いたずらに夏の暑さに生い茂る森からは、樹々のざわめきしか返ってはこず。
くっ、と舌打ちをして、半兵衛が目の前の茂みを睨みつけた頃、ようやく集まってきた男手たちがざわざわと庭の中に散っていく気配がして。
暑い暑い夏の昼下がり、ちいさな佐吉を探して一軍を投入したような、捜索劇が始まった。


やがて半刻程して騒ぎを聞きつけた、庭の世話をしている下男の勘が当たった。
「――佐吉君ッッ!!」
案内された、いや、案内がなければとても其処が“井戸”とは思えぬ崩れ果てた枯れ井戸の淵に手をかけて、半兵衛が青褪めて佐吉を呼ぶ。
こんな暗い、じめじめした。蛇でもでそうな。
「…佐吉君!?いないのかい!?」
息を呑んで気配に耳を澄ませば、やがてやっと聞き取れるくらいの声音が井戸の中に木霊して――
「・・・べ、え、さま?」
「――佐吉君!!」
はああ、と、半兵衛が脱力して、腰を折ってしゃがみこんだ。
「よかった…!」「竹中殿、大丈夫でござるか?」「いや、しかしなんでこんな…」
とりあえずの発見に胸を撫で下ろす一同の空気を割くように、がばっ!と半兵衛が顔を上げる。それから
「ちょっと借りるよ」
「た、竹中様!?」
戸惑う家臣に構わず、其の者の帯から脇差をすっと抜き取ると、半兵衛はひらりと古井戸の縁に手をかけて、がっ、と苔の生す岩に刃を差し込んだ。
「半兵衛様!」「まさか!」「あ、危のうございまする!」
侍女たちがきあああ、と悲鳴を上げて青褪める中、半兵衛は細い体躯を翻して、脇差を軸にガリガリと岩肌を滑りながらあっという間もなく井戸の底へ降りていった。
すたん、と湿った井戸の底に足をつけてすぐ、辺りの闇に目を凝らす。
やがてうっすらと視界が定まってくると、ほんの七尺程も離れていないところに佐吉――小さい白い影がうずくまっているのが見えて。
「佐吉君?」
囁くように、呼びかける。
「は、はん、べえ、さま?」
小さく、か細い声音。
怯え切った其の響きに、半兵衛は息を呑んでからそっと、囁く様に白い影に両手を差し出した。
「うん。半兵衛だよ」
ぱちくり、と。暗闇の中で、稚児の淡い苔色の眼が見開かれた。
「もう大丈夫。おいで、佐吉君」
ふええ、と。
力無い、安堵の溜息と共に――佐吉がしゃくりあげる声が、古井戸の底に響き渡った。
「は、ん べえ、さま」
ふええ、と。
小さなてのひらが、必死に闇の中を泳ぐようにして、半兵衛の本紫色の皮に包まれた細い指に辿り着く。
「…怖かったね」
そのてのひらを手繰り寄せ、小さい身体をぎう、と抱きしめてやりながら。
半兵衛もまた、心から安堵の溜息を。
「ご、ごめんなさい」
「いいんだよ。僕のほうこそ、ごめんね」
君をこんな怖い目に遭わせてしまったね。
そう云いながら、半兵衛は土に汚れた佐吉の頬を強く拭ってやった。
「どこか痛いところは?怪我はなかったかい?」
「よ、よくわかりません」
ひっくひっくと泣き止まない佐吉とは反対に、半兵衛は思わず苦笑した。
「そっか。よくわからないか。じゃ、早く明るいところで見てあげないと…」
そこまで云った時、半兵衛の横にするすると、地上から太い縄が垂らされてきた。
「竹中様!!」「佐吉殿も!」
上から合図のように、家臣らの声が上がったので
「よし…と。じゃ、佐吉君、しっかり掴まっておいでね」
と、半兵衛は佐吉を抱きかかえて縄をぐい、と引っ張った――瞬間。
「しかと掴まっておれ!」
「――え?」
想わぬ声音に半兵衛が驚く――間もなく、ざああ、と勢いよく大人一人と幼児一人を苦もなく引っ張り上げたのは――
「…秀吉!!」
半兵衛の、土にうっすら汚れた顔が驚きの笑みで華やかにほころんだ。
「無事であったか、半兵衛、佐吉!」
勢いのまま、半兵衛が秀吉の胸に倒れこむ。
「――僕は大丈夫。それより…」
自分にしっかとしがみ付いたまま身動きしない佐吉の様子に、半兵衛が不安そうに声をかける。
「ほら、秀吉だよ?君の大好きな。もう大丈夫だよ」
「佐吉、大事ないか」
秀吉の声でようやく佐吉はおずおずと顔を上げたが、すぐに「ご、ごめんなさい」と大粒の涙としゃくり声を。
「何を泣く?お前が悪いことは何もないのであろう?」
いつものようによく響く声で秀吉が佐吉に尋ねたが、応えたのは半兵衛で。
「当たり前だよ!佐吉君は悪くないよ。むしろ、これは僕の監督不行き届きだ…」
「何を云う、半兵衛」
しかし秀吉の声など届かぬように。
半兵衛はしかと佐吉を抱きなおすと、心配そうに見守る家臣達と、畏まる侍女らに毅然と告げた。
「――いいかい、君達。この子は秀吉が世話になった石田の家より与かり受けた、大切な子なんだ。たかだか子飼い一人、と思ったのが、今日の事故に繋がったんじゃないのかい?こうして無事だったからいいものを…もしこの子の身に何かあったらどうするつもりだったのか?」
普段滅多に声音を変えることのない軍師の眉間に寄る皺に、周りの者たちもようやく半兵衛の肚の内を察し、「ははっ」「め、面目御座いません」と声を上げた。
「秀吉からも云ってやって呉れ。子飼い衆こそ、ミライの豊臣のタカラ、だとね。今はこんなに小さく儚げでも」
そう云って長い白い睫を伏せ、自分の肩に顔を埋める子を、大切そうに撫でる様は。
華よりも美しい、と秀吉が目を奪われる。が、直ぐに「ううむ」と唸ると、
「そう。この幼子も、やがて我を支えるもののふとなろう。皆、未来の将と想い、大切にするように。半兵衛の云うとおりに」
と、続けた。
「――はっ」「も、申し訳ありませぬ!」
やがて一人の侍女が「さあ、佐吉殿参りましょう」と半兵衛から佐吉を預かりうけようとしたが、佐吉はぎう、と半兵衛の首に手をまわしたままで、無言の抵抗を試みた。
「おやおや」
小さく苦く笑った後、半兵衛は佐吉を抱かかえたままで、そうしてやるのが当たり前、という風にすたすた歩き出した。
佐吉はといえば、そちらもそれが当然であるかのように、半兵衛の薄い肩と細い首に必死に小さな手をまわして、ぐずぐずと顔を――半兵衛の、自分と同じ紫苑の影のある銀糸に埋めていて。

「泣くんじゃないよ、佐吉」

ぽんぽん、と。
佐吉の小供らしい柔らかい髪を撫でながら、半兵衛が何気なしに云った。
様に――
秀吉が、は、と驚いて目を瞠った。

「いつか戦場に立つおのこが、そんなに簡単に泣いてはいけない。それに、君は豊臣の子なのだからね。秀吉のタメにも強く成らなくてはいけないんだ。さ、泣くのはおやめ」

佐吉、と。

もう其の名の下に、何処か絶対で線引きのある“君”は――つけられていなかった。
「――半兵衛」
思わず声をかけた秀吉に向かい、半兵衛が風のような仕草で振り向いて、相変わらずの笑顔で小首を傾げた。
其の腕に、ちいさなミライを抱えたままで。

ああ、そうか。

なれば。

「…“佐吉”、で構わぬの、だな」
君が自らを託すミライならば。
いつか君が新しい名をも託すのならば。
「――いいかな、って想って」
秀吉の呟きに、半兵衛がこれまでに見せたことのない、穏やかな、穏やかな笑みで応える。
「だってこの子は、僕らの“豊臣の子”なのだからね」
ね、と声をかけられれば、いつものようにぱちくりと、佐吉は白い雪のような肌を濡らして涙をぽろぽろこぼしながらも、「はい、半兵衛さま」と、こくこく頷いた。
くすくす笑いながら、半兵衛が彼のすべすべの頬を外套で拭う。
「あのね、佐吉。今日から君に乳母(めのと)をつけるよ」
「めのと?でも半兵衛さま、佐吉はもう自分のことは自分でできる歳です」
「いやいや、現にあんな処に落っこちただろ?」
「~~~~~~」
「はいはい、泣かない、泣かない。僕が幼い頃から竹中の家で侍女頭をしていた信乃、という者を君の傍に置こうね。そのほうが僕も安心だから。いいよね、秀吉?」
「――うむ」
半兵衛の肩越しに、少し不満げに大きな吊り目で自分を見つめてくる佐吉の頭を撫でてやりながら、秀吉も笑った。
「早う大きく成るがいい、佐吉。豊臣の子として、強う成れ」
「――はいっ、秀吉さま」
其の答えに、半兵衛の紫苑の瞳がまぶしそうに細められ、心から――微笑んだ。


眩しい夏の太陽に、未来を託されたおさなごの銀糸がきらり、煌いた、文月の終わりのこと。


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ゆみのや

Author:ゆみのや
戦国BASARA3の石田三成にぞっこん一目惚れいたし
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